ワクチン接種優等生の各国を悩ます「7割の壁」 若年層が課題
新型コロナウイルスのワクチン接種を速いペースで進めてきたイスラエルや米国、英国で接種率が伸び悩んでいる。米国は社会を正常化させる目標として4日の独立記念日までに1回以上接種した18歳以上の割合を7割にする目標を掲げたが、いずれの国も「7割の壁」に届いていない。若年層への接種拡大が共通の課題で、この間に感染力が強いとされるインド型変異株(デルタ株)も徐々に広がり、警戒を強めている。
イスラエル政府は6月25日、屋内でのマスク着用を義務付けた。同月15日に屋内でのマスク着用の義務を解除するなど規制を緩和したばかりで、わずか10日で撤回に追い込まれた。
6月上旬には1日の新規感染者数が1桁にまで下がった。だが、中旬以降は2つの学校でデルタ株のクラスター(感染者集団)が発生するなどして増加傾向に転じ、世界保健機関(WHO)によると200人を超える日も出てきた。
イスラエルは世界最速ペースでワクチン接種を進めるなどコロナ対策の「優等生」とみなされてきた。ただ、英統計専門サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、1回以上接種した人は5月下旬に人口の6割を超えて以降、頭打ちとなり、6月29日時点で約65%だ。
現地メディアによると、新規感染者には12~15歳が多い。イスラエルではこの年齢層への接種は始めているが普及は遅れているという。国内では若い男性は接種で心筋炎を起こす可能性があるとも懸念されていることから、地元記者は「親が副反応を恐れているのでは」と推測する。
ベネット首相は感染拡大の原因として国際空港の水際対策も「大きな弱点」とし、国内の対策を昨年担った元軍幹部を空港の感染防止責任者に指名。感染リスクが高いとするインドや南アフリカなどへの渡航を原則禁じ、違反者に罰金を科すことも検討している。(カイロ 佐藤貴生)
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米国でも若年層のワクチン接種率低迷が目立ち、米疾病対策センター(CDC)は、このペースでは企業や学校の夏季休暇が終わる8月末までに若年層の接種率が他の年齢層の水準に追いつくのは難しいと警告している。
CDCによると、18歳以上で1回以上接種した人は7月1日時点で約66・7%でバイデン政権が目標とする70%に届いていない。6月21日に発表された調査結果では、5月22日時点で65歳以上の高齢者で80%に達したのに対し、18~29歳は38・3%だった。
調査では未接種の若年層の約4分の1が今後も接種するつもりはないと回答。理由として、副反応が心配▽ワクチンを信用できない▽接種の必要がない-などを挙げる人が多かった。
米国の1日の新規感染者数は6月以降、1万人前後で推移しているが、今ではその約2割がデルタ株の感染だ。各地では夏季休暇明けにコロナ流行前の態勢に戻ることを目指す動きも進むが、CDCはデルタ株拡大を防ぐためにも、若年層へのワクチンの安全性に関する情報発信を強化する必要があると訴えている。
デルタ株が新規感染者の約9割を占める英国でもワクチン接種のペースが低下しつつある。同サイトによると、100万人当たりの接種回数(7日間平均)は5月下旬の8千回台から、6月27日は5200回に減少した。1回以上接種した人の割合は約65%。
英メディアは接種ペースの鈍化の要因に若年層の接種遅れを指摘する。英当局によると、16~29歳の13%が接種を躊躇(ちゅうちょ)しており、30~49歳の8%、50歳以上の2%より数値が高い。若い世代は副反応への懸念が強いためとみられている。
英アストラゼネカ製ワクチンの接種後に多くの若年層に血栓ができた問題を受け、政府が40歳未満に別のワクチン接種を促したことも接種回数の減少につながった可能性がある。デルタ株の感染は未接種の若年層に集中しているとも伝えられ、早期の接種が必要となっている。(ワシントン 大内清、ロンドン 板東和正)