大日本印刷、大電力対応のワイヤレス充電用コイル開発 薄型・軽量でEV普及を後押し
大日本印刷は、ケーブルを接続することなく電気自動車(EV)への充電を可能にするワイヤレス充電技術で、米国自動車技術会(SAE)が定める大電力伝送規格に対応したシート型コイルを開発した。ワイヤレス充電用コイルは海外では一部のEVに搭載されているが、従来製品に比べて厚さ、重量とも約4分の1に低減した。実用化が進めば、EVの普及につながる可能性がある。
開発したシート型コイルは、送電側と受電側双方のワイヤレス充電システムに対応。片方のコイルに電流を流すことで発生する磁界の振動によって、もう一方のコイルを共鳴させ、離れたコイル間で電力を伝送できる「磁界共鳴方式」という技術を採用している。駐車場の地面に設置された送電側のコイルから、車体に搭載されたコイルへと電力を伝送することでEVへの充電が可能になる。
コイルの厚さは約3ミリ、重量は約1キロ。半導体の回路設計などの技術を応用し、シートにコイルを直接形成することで、細い銅線を束ねたリッツ線と呼ばれる電線を採用した従来技術に比べ、大幅な薄型化・軽量化を実現した。使用する材料も少なくて済むため、コストも引き下げられるという。
システムメーカーとともに、年明けからシート型コイルを実装したEVで実証試験を行う。充放電の信頼性や耐久性などを確認する。一般家庭や商業施設での充電システムとして有望とみている。EV用のほかにも、工場などで稼働する無人搬送機などへの搭載も見込んでいる。国内外の自動車メーカーやシステムメーカーなどに採用を働き掛けており、令和7年までに年間50億円の売り上げを目指す。
同社は元年5月に、出力3・7キロワットまでの電力を伝送できるシート型コイルを発表。今回、コイルのパターン最適化などによりコイル外への磁界漏洩(ろうえい)や発熱を抑制し、SAEの大電力伝送規格である出力11・1キロワットまでの伝送を可能にした。海外メーカーが採用を進める大電力伝送に対応したことで、海外展開が容易になる。将来的には路面に埋め込んだ送電コイルからEVに電力を供給する走行中充電向けの展開も視野に入れている。