デジタル羅針盤

EC拡大継続へ リピーター増やす工夫を

 インターネットを使った電子商取引(EC)が拡大している。一般消費者向けでは、新型コロナウイルス禍で旅行などのサービス系の利用が減少したものの、家電やインテリアといった物販系の利用額は大きく増加した。経済産業省によると、令和2年の国内EC市場は約19兆円と10年前の倍になった。使い勝手が良くなり、ネットを介した買い物への抵抗が減ってきたと推測される。

 コロナ後でも、EC活用は継続して拡大すると予測される。買い物を必要とする若年層は、共働きであったり、子育てがあったりして忙しい。休日に出かけて探し回らなくても、空いた時間にネット上で商品を見つけ、購入することができる。ECの役割は、買い物の時短を実現するだけでなく、消費者の生活を豊かにすることだ。

 店舗に陳列できる商品数は限定的だが、ネットだと販売先や商品の種類が無限に広がる。商品を紹介する動画には、おしゃれなライフスタイルをイメージできる工夫がされ、商品価値がダイレクトに伝わる。性能や価格を比較しながら「選ぶ楽しみ」がある。生産者を支援したい消費者は、ふるさと納税や産地からの直送サービスを利用し、地域活性化に一役買う。消費者は、世界観や価値観を手軽に広げて楽しむことができる。

 企業がネットに投じる広告費の総額はテレビ広告費を超えたという。企業のネット広告を支援する「マーケッター」や「インフルエンサー」などのサービスは、個人事業主や新興企業が活躍できる職業でもあり活況だ。商品を魅力的に見せる画像、利用方法を簡潔に解説する動画、生活が豊かになることを表現した文章づくりがEC活況の裏に存在し、消費者を魅了して飽きさせない。広告が功を奏することで売り上げが伸びる。

 だが、この伸びを瞬間的なものにしない努力が必要だ。一度購入した顧客には継続的に買ってもらいたい。新たに顧客になった人と、繰り返し買う顧客との割合は、2対8といわれる。リピーターを増やし、維持することができるかが、ECの成否につながる。

 消費者にとってみると、ネット上に広がる無数の選択肢から探し出したものが、お気に入りの一品になることは大きな喜びだ。どんなふうに活用すると快適なのか、次はどんな新商品が出るのかと思いを巡らす。ファン同士で商品の良さや使い方の工夫について、情報交換を楽しむこともできる。デジタル化が進むことでコミュニケーションが疎遠になるとの懸念がある中、欠かせない話題の一つだ。われわれの生活を豊かにしてくれるECの発展に期待したい。(小塚裕史)

■こづか・ひろし ビジネス・コンサルタント。京大大学院工学科修了。野村総合研究所、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイカレント・コンサルティングなどを経て、平成31年1月にデジタル・コネクトを設立し、代表取締役に就任。主な著書に『デジタルトランスフォーメーションの実際』(日経BP社)。兵庫県出身。