サービス

リニア、時速500キロの世界を体感 新型車両で空気抵抗低減や軽量化実現 

 時速500キロの世界を体感-。日本が誇る“夢の超特急”リニア中央新幹線の試乗会に参加した。走行時の快適性は新幹線と比べても遜色はなく、JR東海は「すぐにでも営業運転できるレベルにある」と話す。ただ、令和9年開業を目指す東京・品川-名古屋間のうち、静岡工区については環境への影響を懸念する静岡県が着工を認めていない。開業延期は不可避とされる中、現場では“来る日”に備え、さらなる乗り心地の向上を目指して技術を磨いている。

 「時速150キロに達すると(車両が)浮上するので体感してみてください」

 今月8日午後、山梨県内のリニア実験線。メディア向け試乗会の参加者を乗せたリニア車両が動き出すと、同行するJR東海の広報担当者が呼び掛けた。

 間もなくして車輪走行から浮上走行に移行。揺れや騒音が完全ではないまでも急に収まった。飛行機が離陸したかのようだ。車両内の設置モニターの速度表示は上昇していき、動き出してから2分余りで最高速度の時速500キロに到達した。

 新幹線と比べると若干の揺れがあるように感じられ、速度が上がるに連れて空気振動の音やモーター音のようなものも聞こえてくる。広報担当者は「今後も改善していく」と話す。ただ、その空気を切り裂くような揺れや音こそが、新幹線をはるかに上回る速さを実感させた。

 その途中、1キロ進むと40メートルの高低差が生じる斜度の急勾配や急カーブの区間もあったが、少しも速度が落ちることはなく、全長42.8キロの実験線区間を走破するのは、まさに「あっという間」。トップスピードの走行区間は短かったにもかかわらず、20分程度で実験線をおおむね1往復半した。

 今回、乗車したのは昨年8月に導入されたばかりの新型車両「L0系改良型」。主な改良点は、先頭部分の流線形のデザインを工夫することで、これまでよりも空気抵抗を減らした。

 また、リニアは架線がなく地面からも離れて走行するため、車両にガスタービン発電機を積んで一部の電気を賄っていた。改良型は全面的に電磁誘導で車両に電気を集められるようになり、発電機は不要となったことで車両の軽量化を実現した。

 客室は新幹線より狭いように感じられるが、両サイドに2席ずつ配置された座席はクッション性があり、座り心地が良い。担当者は「ばねとスポンジを組み合わせて快適性を向上させた。座面の幅も新幹線のグリーン車と同等」と説明。新幹線の座席ほど重厚感がないが、「カーボン(炭素)を使うことで軽量化した」という。車両を軽くすれば省エネにつながるし、速度も出しやすくなる。

 広報部長を務める武田健太郎常務執行役員は「もう少しブラッシュアップしたい部分はある。ただ、今すぐ営業運転をしようと思えば可能なレベルには達している」と話す。国土交通省の有識者会議は平成21年、JR東海のリニアについて「営業運転に支障のない技術レベルに到達している」と評価済みだ。

 しかし、現時点で開業に向けた見通しは立っていない。南アルプスの地下を貫くリニアのルートのうち、静岡県内を通過する一部区間について、同県は工事の影響で県内を流れる大井川の河川流量が減少するとの懸念から着工を認めていない。

 6月の知事選で「ルート変更」や「工事中止」を訴えて再選を果たした川勝平太知事は反対姿勢を強めており、今月24日投開票の参院静岡選挙区補欠選挙についても「最大の争点は水。静岡県の水を守る人を支援していきたい」とし、知事選で自身の選対に入っていた野党系候補を支持する考えを示した。

 一方、仲介役の国交省が設置した有識者会議は「科学的・工学的」な分析の結果、適切な対策がとられれば流量は維持できるなどとした中間報告を取りまとめる方針で、JR東海もその内容を踏まえて地元に理解を求めていく構えだ。

 「(研究や開発をする)時間はありますので…」。今後の技術的な改善点を尋ねられた広報担当者はそう苦笑いしていたが、いつまでも世界有数の技術が日の目を見ることができないというのは何とも忍びない。(福田涼太郎)