IT

「ヤフコメ」AIで誹謗中傷を非表示 「利便性と安心」どう両立

 ニュースサイト「ヤフーニュース」が衆院選の公示に合わせてネット上での誹謗(ひぼう)中傷対策を強化して以降、「不適切な投稿」が集中したことを理由として、閲覧者がインターネットのニュースについて意見を書き込める「コメント欄」が非表示となる事例が相次いでいる。コメント欄は近年多くの閲覧者が書き込みをしており、社会的な存在感が増している。専門家は「事業者は社会的責任として、利便性だけでなく、安心して利用できる環境づくりにも配慮する必要がある」と指摘する。

■16件に1件「不適切」

 コメント欄全体が非表示となったのは、韓国漁船の転覆事故(20日)や小室圭さんと眞子さんの結婚(26日)をめぐる記事など。運営元のヤフーは、人工知能(AI)が判断した「違反コメント」が一定数に達すると、コメント欄全体を非表示とする機能を19日に導入していた。

 以前からコメント欄は、ヘイトスピーチやフェイクニュースの温床になっていると指摘されていた。同様に、ニュースなどについて不特定多数が意見を書き込めるツイッター、フェイスブックなどでも、しばしばあり方について議論が起きている。

 ヤフーによると、同社は誹謗中傷対策としてAIと人によるパトロールで、1日の投稿コメント約32万件のうち2万件ほどを削除している(6月時点)。単純計算で16件に1件ほどが「不適切なコメント」と判断されていることになる。

 新機能について同社の広報担当者は「恣意的(しいてき)な運用は避け、表現の自由を考慮しつつ、誹謗中傷への対策を強化していく」と話す。

■「意見も娯楽の一部」

 一方で、集まったコメントをすべて非表示とすることには、慎重さを求める意見もある。ヤフーによると、一度非表示になると表示は基本的に復活せず、問題がないコメントも一律に見られなくなる。また、非表示とする基準や、どんな内容が具体的に「違反コメント」に該当したのかは現在公表されていない。

 ソーシャルメディアに詳しい桜美林大の平(たいら)和博教授は、「どのような投稿を表示し、削除するかは、運営側にも表現の自由に基づいた裁量がある」と一定の理解を示すが、「(ヤフーなどの)社会インフラとなっている大規模プラットフォームは、その責任を担うため、利便性と安全性のバランスをとっていかなければならない」とくぎを刺す。

 上智大非常勤講師でテレビプロデューサーの鎮目博道(しずめ・ひろみち)氏は、コメント欄について、「マスメディアとしての側面も持ち始めている」と指摘する。

 自身が手掛けるネット放送局の番組にもコメント欄があり、「リアルタイムでコメントがつく楽しさが支持されている」とその“価値”を分析。「ニュースもコメントを見ながら読むのが楽しい。意見もコンテンツ(娯楽)の一部として認識されている」と説明する。 (三宅令)