イトーヨーカ堂は、婦人服の高品質ブランド「ギャローリア」を販売する店舗で接客スタッフを手厚くした【拡大】
流通や通信など各業界のトップクラス企業が「接客」に磨きをかけ始めている。本格的なデフレ脱却の道筋が見えない中、競合同士の消耗戦を避け、価格以外で差別化を図る。値下げ戦略ほど早期の成果は出にくいものの、業界トップならではの経営体力を生かし長期的な顧客満足度の向上に取り組んでいる。
「中に着る服を替えれば雰囲気も変わりますよ」。イトーヨーカドー武蔵境店(東京都武蔵野市)で、ベストを品定めしていた60代の女性客に店員が声をかけた。店員の言葉にほだされ、女性客はベストに加えてニットも購入した。
フランチャイズも含めた売上高で流通最大手のセブン&アイ・ホールディングス(HD)は昨秋から、総合スーパーのイトーヨーカドーの全国約160店舗で、婦人向け高品質ブランド「ギャローリア」売り場専用の接客スタッフを本格配置。接客技術はHD傘下の百貨店、そごう・西武社員の直伝だ。
「付加価値をつけた価格が高めのブランドには、その価値を伝える接客が欠かせない」。イトーヨーカ堂の戸井和久衣料事業部長は強調する。配置後の売り上げは、前年比で2割以上も増加。今年からは試着時の提案で販売増が見込めるバッグ類や婦人靴で接客戦略を強化する。
百貨店最大手の三越伊勢丹HDは4月から、5店舗の営業時間を30分から1時間短縮、スタッフの勤務シフトを改め、接客が手厚くなる時間帯の人員を増やしている。