森永乳業のご飯向けチーズ商品「クラフトチーズでごはん!?」=東京都港区【拡大】
小麦製品の値上がりでコメの価格に相対的な値頃感が生まれていることを背景に、食品メーカーや外食大手がご飯の需要拡大を見込んで関連商品の充実を図っている。定番のふりかけやカレーなどのほか、パン向け一辺倒だった乳業メーカーがご飯向けの商品を新たに開発。近年のご飯離れでしぼんだ需要を掘り起こそうとする試みは、関連業界でさらに広がりそうだ。
夏は冷やし汁感覚
「のりたま」を販売するふりかけ最大手の丸美屋食品工業が、14日に投入する「涼亭ごはん」シリーズ(231円)は、夏場を狙った新商品だ。ご飯にかけて冷蔵庫で冷せば、冷や汁ご飯が完成するといい、同社の担当者は「暑い季節にはアツアツのご飯を敬遠する人も多いが、この商品は冷やし汁感覚で楽しめる」とアピールする。
ふりかけは近年、乾燥したドライタイプだけでなく、つくだ煮感覚のおかずタイプなど多様化している。同社によると、ふりかけ商品の国内全体の販売額は2012年に前年比0.4%減の509億円と伸び悩んだものの、「ご飯は軟らかくて食べやすいことから、高齢者の増加などで需要が伸びる」といった期待も業界には少なくない。
農林水産省などによると、12年産米(60キロ)の業者間取引価格は2月時点で前年同期比8%増の1万6534円と高止まりが続くものの、小売価格は5キロ当たり2122円と昨年12月より50円ほど値下がりした。総務省の家計調査(2人以上の世帯が対象)では11年の支出額でコメはパンに逆転されたが、小麦の政府売り渡し価格が12年10月に引き上げられ、今年4月にも平均9.7%アップし、パンなど小麦製品の値上がりにつながっていることもあり、12年後半以降は単月別でコメがパンを上回るケースが増えている。
チーズ組み合わせ
このため、パン関連商品に軸足を置いてきた乳業メーカーも、ご飯に注目している。森永乳業は12年9月、温かいご飯にチーズをかけるだけで、ドリアのような味わいを再現するという「クラフト チーズでごはん!?」(200円)を発売。チーズとご飯という目新しい組み合わせが受け入れられ、今年1月までの売り上げは計画比で2倍を達成するヒット商品に育っている。購入者からは「育ち盛りの子供が好きな味」との声も多く、新たな需要の掘り起こしに成功した。
同社は2月に「ツナマヨ」味を追加。雪印も3月から同様の商品を投入して追随するなど、乳業メーカーのご飯関連商品の開発が熱を帯びつつある。
大リーグのイチロー選手が朝食にカレーを好むと伝えられたことをきっかけに「朝カレー」を販促する動きもある。「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開する壱番屋は、ご飯の量を抑えた「朝カレーセット」を全国約15店舗で展開。来店客数の多い東京・新宿の店舗では、朝食時間帯の来客の約3割が朝カレーを注文するなど好評で、対応店の拡大を検討している。
レトルトカレーでは大手のハウス食品が12年2月に発売した「ザ・ホテルカレー」(200グラム入り、約240円)が好調だ。この分野の中心価格帯とされる160円より割高だが、味へのこだわりが人気を集め、年間5億円でヒットとされる市場で12年に7億円売り上げた。今年はルータイプも投入し、さらなる拡販を狙っている。(西村利也)