日本民営鉄道協会によると、10年の大手民間鉄道16社平均のVVVF導入率は54%。これに対し、京王は96%と業界平均を大きく上回る。その後も順次導入を進め、12年9月に京王線と井の頭線の計843両すべてにVVVFを導入した。
一方の回生ブレーキは、VVVF導入完了より10年以上前の1999年に全車両に採用された。回生ブレーキとは、ブレーキをかけたときにモーターを発電機として作動させ、これにより発生した電力を架線に戻すことで、この電力を後続電車などで利用できる装置。これら2つの技術を組み合わせることで、電車1両が1キロ走行するのに必要な消費電力量が、これら装置の導入前と比べ約45%削減されるという。
電車の省エネ対策はこれだけではない。電気を送る際の損失を減らすため、「上下線一括き電化」と呼ばれる仕組みも導入した。ブレーキで発生した電気は従来、変電所を経由させていたため、回生電力の損失が大きかった。上り線と下り線の電車に電気を供給する線(き電線)を新たに接続することで、ブレーキで発生した電気を最短ルートで送ることができ、効率よく電気を利用できる。導入は井の頭線(全長12.7キロ)のみで、計33カ所にき電線を設置している。
コスト削減に注力
同社は、駅や基地局などに太陽光発電システムを設置したりLEDを採用した省エネ型案内看板を導入したりして省エネ化に取り組んでいる。二酸化炭素排出量を約65%削減できる環境配慮型変圧器の導入も進めている。
鉄道会社は相次ぎ、省エネ車両を導入している。原発稼働停止に伴う電気料金の値上げが、電力使用量の多い鉄道会社の経営を圧迫しているためだ。一方で「蓄電池の活用など新しい省エネ技術の研究も行っている」(志賀氏)といい、新技術導入でさらなる消費電力の削減につなげる考えだ。(松元洋平)