関西電力が首都圏での電力小売り参入を決めたのは、原発停止で2期連続の巨額赤字を計上するなか「越境売電」に踏み切ることで、2016年にも予定される電力市場の全面自由化に先手を打つためだ。電力料金値上げによる大口顧客流出、管内の電力需要伸び悩みなど、関電を取り巻く環境は厳しさを増している。自由化を逆手に取り「肥沃(ひよく)」な市場が広がる首都圏を今後の成長戦略の柱に据える考えだ。
首都圏での電力小売りに挑む関電エネルギーソリューションの松村幹雄常務は、自社の強みについて「電気設備のメンテナンスのほか、ガスも含めたエネルギーの効率的な使い方を提案している」と指摘し、先行する他の新電力との競争に自信を示した。
関電が新電力に参入してまで販売を広げるのは、首都圏市場の魅力だ。関電管内では人口の伸び悩みや企業の生産拠点流出などで、電力需要は頭打ちが続く。さらに追い打ちをかけたのが、原発停止による財務悪化で、今春に踏み切った電力料金の値上げ。値上げした4月以降の約半年間で、大口顧客の流出は1500件を超えた。