現地では、専門業者に任せずに自らの手で生活空間を快適にしようとするDIY(ディー・アイ・ワイ)文化が根付いており、居住者自身が率先して壁を塗ったりするのを目の当たりにして、知らず知らずに影響を受けていたのだ。
また、帰国後にベンチャー系のデベロッパーに就職したことも、視野を広げる上で役に立った。住宅の購入者は最終的に間取りや床材の変更などを求めることがしばしばある。それまでは全て同じ間取りの住戸を売るのが基本という考えに陥りがちだったが、一連の経験を通じて「購入者はオリジナリティーに富み、自分の生活にも合った住まいを求めていると気づき始めた」という。
「自分らしく住みたい」といった理由で、中古住宅を購入後にリノベーションを行うケースが定着しつつあり、鵜飼社長は賃貸住宅でも同じような動きが広がっていくとみている。(伊藤俊祐)
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≪Q&A≫
■「家造りは面白い」祖父に感化
--高専出身の女性が建築関連のベンチャーを起業するケースは珍しいのでは
「いろいろな地域から学生が集まることや、早く独立した生活を送りたいこともあって全寮制の高専を選んだ。2年生になって専門科目を選び、最終的には建築学科を卒業したが、設計事務所を営んでいた祖父が『家造りは面白い』と考えていたことに感化され、建築関連の仕事に就いたのかもしれない。起業したのは身内に商売人が多かったことが影響した気もする」
--会社を興したきっかけは
「2つ目の設計事務所で働いていたとき、知人から土地活用の相談を受け、深く考えずに対応したところ『ぜひとも具現化したい』と頼まれた。それを上司に話したら『僕の知らないところで顧客がつくのは、君に魅力があるということだから、独立してはどうか』と言われ、起業した。だから富や名誉、権力を得ようといった野望が“めらめら”という感じではなく、家庭や社会の接点を大事にしながらやっていける道を探したというのが実情だ」