■生産性と運搬能力向上に注力
--業界全体が活況を呈している
「東北の復興がセメントの旺盛な需要につながっている上、昨年は安倍晋三政権の緊急経済対策や大都市圏での再開発などで官需、民需とも顕著に伸びた」
--各社はフル操業態勢だ
「今年度に見込まれる内需は4800万トン近くで、22年前のピーク時(8630万トン)に比べれば半分にすぎないが、工場の閉鎖や縮小などスリム化が進んだ結果、操業率は(目いっぱいで)パンパン。『1トンでも多く』という状況にある。内需に加えて輸出が1000万トンとすると、国内メーカーの年間生産能力の合計分となり、需要と生産が合致している」
--在庫を積み増せない状況はリスクがあるのでは
「荷繰りの問題もある。海が荒れ、消費地までセメントを運べないと工場生産をストップせざるを得ないので、各社は新たな船を造って安定的な運搬能力の確保に努めている。当社も今月に新たな運搬船を就航し、海送能力を10%アップさせる。東京五輪開催の2020年まで今の需要は続くとみており、船を更新する際には輸送能力の拡大を図っている」
--運搬以外の設備投資は
「良質なセメントを安定的に生産し、荷切れさせないため、焼成したセメント原料を急冷する設備を高知工場と赤穂工場に入れ、生産性を上げた。今年中に栃木工場などにも入れ、トータルで年30万トンの増産につなげる」
--業界の悲願ともいえる値上げの見通しは
「国内メーカーの製品はいずれも最高の品質で差別化がしにくく、値上げを妨げてきた。これだけ需給が締まっている現状は絶好のチャンス。セメント協会の会長を引き受けることになったが、優秀な人材を集めるためにも、値上げによって業界水準を底上げしたい」
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