大手メーカーの生産拠点や中小の部品メーカーが多く立地し、製造品出荷額が東北1位の福島県。ものづくり中心の土地柄にあって、起業や各種研修、コンサルティングなど、ソフト面の経営支援ビジネスを立ち上げ、成長を続けているのが、クリフだ。女性中心の若い会社で、安倍晋三政権の経済政策であるアベノミクスを追い風に、被災地復興の新たな担い手として、女性の起業支援にも力を入れる。
JR福島駅から歩いて約15分。市街地と住宅地の境にある生鮮スーパー脇の広い階段を上った2階に、オフィスがある。社員4人、パート従業員9人の計13人のスタッフのうち12人が女性だ。
同じフロアには、石山純恵(すみえ)社長が副理事長として参画し、運営するNPO法人(特定非営利活動法人)の学童保育所があり、放課後になると、子供たちの元気な声が、オフィスにも響いてくる。
◆成長市場に照準
社名のクリフ(CRF)は、英字の「コミュニケーション」「ルネサンス(再生)」「福島」の頭文字からとった。手がけるのはまさに、コミュニケーションビジネスで、こうした事業モデルは地方都市ではめずらしい。
女性経営者自体が少ない福島県で、「『すき間産業』的な事業への評価は、当初は決して高いものではなかった」と石山社長は言う。
だが、成長市場に照準を合わせたビジネスは、福島商工会議所の優良企業表彰制度で、2012年度の社会貢献部門金賞・経営革新部門銀賞を受賞した。さらに、全国商工会議所女性連合会の13年度女性起業家大賞(日本商工会議所会頭賞)を福島県で初めて受賞し、会社の知名度も上がった。
石山社長は、県内外の講演会やセミナーに引っ張りだこ。被災地の女性リーダー育成を目的にしたノルウェーの基金の研修プログラムで、福島県を代表する女性にも選ばれ、5月半ばに渡航した。