そんなときビジネスの手法を用いて、貧困などの問題を解決する社会的投資を知る。帰国後の09年にARUNを設立し、カンボジアの起業家への投資を始めた。ARUNはクメール語で暁という意味で、新しい社会をつくる希望を込めている。
これまでにカンボジアで5社に投資してきた。またインドでも1社に出資している。いずれも現地を視察して、事業内容や地域への貢献、雇用状況などを精査して出資を決めた。現地の事務所が推薦した候補から選考するが、実際に投資にいたるのは20社に1社しかない。投資先には経営や販売の支援なども行い、経営者の育成にも務めている。
このうち有機米や蜂蜜の製造販売事業で成果を上げているサハクレア・セダックは、農家から適正価格で購入し、販路を拡大して農民の生活向上に貢献している。創業者のヤン・セン・コマ氏は、アジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞を受賞している。
◆出資者10万人目指す
女性用付け毛の製造販売のアルジュニ・インターナショナルは、孤児や人身売買、売春の被害者の女性を積極的に雇用し、自立を促している。首都プノンペンなどで複数のホテルを経営しているフランジパニ・ヴィラ・ホテルは、母子家庭出身者、貧しい農村出身者を採用することで、青少年育成に力を注いでいる。また地場産業活性化のために、インテリアは地元の大工に発注している。孤児院へ活動支援の一環として寄付もしている。