世界販売300万台へ 富士フイルム
≪STORY≫
デジタルカメラの普及で低迷するインスタントカメラの中で、富士フイルムの「チェキ」が奮闘している。2014年度の世界販売は300万台を見込んでおり、販売が低迷していた05年度の約30倍。一時は存亡の岐路に立たされたチェキが「V字復活」を果たした背景には、製品としての完成度の高さに加え、市場ニーズに裏打ちされた販売戦略がある。
チェキの初代機「instax mini10」が登場したのは1998年11月。富士フイルムのインスタントカメラ「フォトラマ」のフィルム代が1枚当たり数百円と高価なうえ、本体も持ち運ぶにはやや大きいなどの課題があり、新しいカメラ開発への期待が高まっていた。
このころ、プリクラが女子中高生を中心に大ブームだった。富士フイルムのレンズ付きフィルム「写ルンです」も、女子中高生に人気があった。コミュニケーションの道具として、カメラが若者の必需品となっていたのだ。
富士フイルムも、チェキの開発にあたり、女子中高生から20代女性をターゲットに置いた。東京・西麻布の本社に女子中高生や20代女性を集め、どんなカメラがあったら楽しいかをテーマに話し合ってもらった。中村祥敬・イメージング事業部instax(チェキ)グループ統括マネージャーは「『その場で撮影したプリントをすぐに分けられたらいいよね』という意見が最も多かった」と話す。開発チームは、この意見の具現化を目指した。
チェキで撮影・現像した写真の大きさは縦8.6センチ、横5.4センチの名刺サイズ。中高生の生徒手帳とほぼ同じ大きさで、撮った写真をそのまま生徒手帳にはさめるようにした。
フィルムの価格にも気を配った。プリクラ1回の撮影代がおおむね400円前後。2人で行くと800円くらいになる。10枚セットで1000円を超えない価格設定にすることで、女子中高生がお小遣い程度で買えるようにした。