江上 銀行をはじめとする金融業界は融資や投資の意思決定においてリスクとリターンの計測を高度に求められており、プレディクティブアナリティクスが最も必要とされる業界だ。実際、リスク管理を中心にこの20年ほど予測技術が研究され、ある程度先進的なレベルにたどり着いた。金融機関には財務情報、非財務情報、取引情報、個人情報など、将来予測に有効な情報が豊富に存在する。さまざまな技術を用い、これらを統合的に解析すれば、リスク管理やマーケティング、取引方針策定などに生かせる。だが現状、扱う情報は財務情報が中心でその他の情報は十分に生かし切れていないといえる。金融業界再編が求められ始めており、経営環境も非常に厳しくなっていく。技術やスキル、そして人材や情報もそろっている金融業界が、情報を活用しきれていないとすればそれは、顧客や地域に対する「愛」が欠けているからだ。
重要なことは、顧客と金融機関の経営は一体と考えた上で“顧客最適”の意識の下に仕組みを形成することだ。これを“バリューチェーンファイナンス”と呼ぶ。財務情報に顕われない企業の根っこにある経営資源情報を顧客の将来予測にいかに結びつけ支援を考えていくか、そこにデータベースやビッグデータをどう扱っていくかを考えることである。
■空白領域へのアプローチ
佐藤 知財は事業に役立たなければ価値がなく、企業では知財や知財ポートフォリオの構築と戦略的活用が求められている。企業では研究開発戦略、知財戦略、事業戦略の三位一体化が志向されており、これらをつなぐために知財情報は非常に役立つツールとなるはずである。