みなさんがぜひ乗ってみたい高級車は何だろうか-。そんな問いにメルセデス・ベンツ、BMW、アウディといった名前がすぐに浮ぶことだろう。これら“ジャーマン3”をはじめとする世界のプレミアムカーと同じ舞台で戦い続けるのが、トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」だ。ハンドルを握ると納得する完成度の高さには、日本のモノづくりの極みすら感じる。それでも、依然としてレクサスに対して厳しい意見があるのも確かだ。「ラグジュアリーブランド」として揺るぎないステータスを確立するために、これから何をすべきか。昨年4月にレクサス・インターナショナルの代表に就任した福市得雄氏(トヨタ自動車専務役員)に話を聞いた。(聞き手 大竹信生)
《世界で「ラグジュアリーブランド」として認められていない》
――まずは、福市さんがレクサスのトップとして取り組みたいことを聞かせてください
福市氏「いろんなことがやりたいですし、やらなくてはいけません。まず、日本のメーカーで『ラグジュアリーブランド』として世界で認められたブランドはまだないと思うんですね。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのドイツ3社と比べても歴史が浅いんです。彼らには語り継がれるストーリーがあります。レクサスにも語れるような歴史ができればいいなと考えています」
「レクサスは1989年にアメリカで立ち上げてから25年しか経っていません。その中で無理やりストーリーを作ろうとしてもダメです。今のレクサスが世界的に認められているポイントは、品質の良さとおもてなしのサービスだと思うんですね。ただし、それは土台としてあるべきもの。お客さんが期待するのは、その上にブランドとしてどんな個性があるのかということです。我々が構築しなければいけない個性とは、エモーショナル(感情的)な走りやデザインです。ただ単純にかっこよくて速ければいいというわけではなく、そこに語り継がれるストーリーがなくてはいけません」
「じゃあ、具体的にどうするのか。とにかくライバルの性能を超えるか、『他のブランドにはない個性』を作ることです。特にデザインでは、他社をまねするようなことは絶対にやりません。お客さんがなぜレクサスを買ったのか…、それを周りに説明しなければいけないものは作りたくない。説明しなくても皆さんに『いいクルマを買いましたね』と言われるような車作りをしたい。もちろん品質とサービスは維持、もしくはどんどん良くしていく前提で考えています」
――その中で今後、どういうラインアップを目指すのでしょうか。今年のデトロイトモーターショーではスポーティな「GSF」を発表しましたが、これから強化したい車種はありますか
福市氏「エモーショナルなクルマを作り続けることで、レクサスのフィーリングをぜひ感じて頂きたい。また、業界全体の動きとしてSUVは強化したい。その表れが昨年出した『NX』です」