【知恵の経営】外注先を思いやる上場企業 (1/2ページ)

2015.9.23 05:00

 □法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司

 新潟市南区にダイニチ工業がある。社員数は約500人の東証1部上場企業だ。主な事業は石油ファンヒーターや加湿器の製造で、ともに業界ではトップブランドである。

 中小企業の専門家である筆者が、なぜ同社を取り上げたかというと、大企業・上場企業でありながら、業績志向・自利志向の経営ではなく、幸せ志向・利他志向の経営を1964年の設立以来、愚直一途に実践している、いい企業だからだ。

 周知のように、わが国の自動車メーカーをはじめ大半の大企業生産システムは無倉庫・無在庫経営、「必要な商品を必要な数だけ必要な時に」、つまりジャストインタイム経営である。

 だが、世の中は天災地変などもあり理想どおりにはいかず、誰かが、とりわけ弱い立場にある企業が、在庫を肩代わりしているのが偽らざる事実だ。こうした中、業界の常識とは全く異なる外注政策を愚直に実践し、協力企業・外注企業から高い評価を受けているのが、ダイニチ工業である。

 同社の主力商品は、冬の季節商品である。春先や真夏に購入する顧客はほとんどいない。それゆえ、生産効率を考えれば、売れ始める秋口から冬にかけて集中生産すれば、多くの倉庫や多くの在庫を持たなくてもいいことになる。

 しかしながら、同社はこの季節商品を、1年通して平準生産している。全く売れない真夏にも、もしかしたら暖冬などで販売数量がダウンするかもしれないのに、黙々と毎月一定量を作り続けている。

 その最大の理由が見事である。吉井久夫社長は「協力企業・外注企業さんへの配慮です」と明言する。

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。