サバを刻んでイカゲソと交ぜたメンチカツの製造工程=千葉県南房総市千倉町【拡大】
安く買いたたかれてしまったり、あるいは食べるにはちょっと小さかったり、そもそも味があまり良くないなどの理由で、食用の需要が低いとされてきた「未利用魚」。豊かな海を望む千葉県南房総市千倉町の水産加工・鮮魚販売会社のスズ市水産では、未利用魚「ゴマサバ」を活用したおいしい加工食品の開発に成功。カタログ販売などで人気を博している。
◆元漁師の確かな目
同社の鈴木基進社長(54)は、もともとは千倉の網元の4代目。父の後を継ぎ、若い頃は自らも大型船に乗り込んで1~5月まではサバ、8月からはサンマを追いかけ汗を流した。1986年に漁師を廃業。漁師として培った商品の良しあしを見抜く目を頼りに翌87年、水産加工の道に入った。元船員の妻らを従業員としてスカウトし、約10人で新たな海路にかじを切った。93年頃には鮮魚販売事業にも手を広げ、98年には工場も建設。年間の売り上げは10億円に及ぶという。
元漁師の目利きは確かで、スーパーから料亭まで取引先は幅広い。「外房は勝浦、内房は金谷まで、房総半島の南半分全ての漁港をカバーする」と豪語する買い付け網が自慢。加工、販売まで一手に担うため、中間業者を通さない分安価で新鮮な商品を提供しているという。
取引先のレストランやシェフなどとコラボした「伊勢エビテルミドール」、「天然黒あわび煮貝」など高級な加工食品は複数の有名百貨店にお中元などの贈答品として採用されるなど高い評価を受けている。