「刺激とストレスが必要な人にはスタートアップが向いています」と話すインフォステラの倉原直美さん【拡大】
□インフォステラ・倉原直美CEOに聞く
日本では、航空宇宙業界をスタートアップがディスラプト(破壊)することは特に難しいと考えられている。打ち上げロケットと有人宇宙機の技術開発が進むとともに、国外では商用宇宙開発がブームとなっている。しかし、「超小型人工衛星開発スタートアップ」の回でも説明したとおり、日本ではいまだに政府が決まった大企業に開発を発注することが当たり前になっている。
インフォステラ(東京都渋谷区)の倉原直美CEO(最高経営責任者)は、世界中の企業が保有する既存の設備を活用した衛星地上局ネットワークを築くという革新的なビジネスを考案した。
◆非稼働時間を売る
--人工衛星の事業をよく知らない人たちにも分かるようにインフォステラのシステムを説明してください
「人工衛星の運用は3つの部分からなります。人工衛星そのもの、それを軌道に乗せるためのロケット、そして地上で衛星と通信する地上局です。地上局で衛星からのデータがダウンロードされ、制御のための命令がアップロードされます」
--地上局は常に衛星と通信しているのですか
「そういうわけではありません。地上局が衛星と通信できるのは、衛星が地上局のカバーする領域を通過するときに限られます。通信できる頻度は軌道によって異なりますが、一般的に、衛星が地上局と通信できるのは1日に30分ほどです。アンテナを含めて、地上局の設置には3000万円ほどかかります。ほとんどの時間何もしない設備の割には初期投資がとても大きいのです。インフォステラは地上局の持ち主が、98%を占める非稼働時間に他の衛星運用者に設備を貸すマーケットプレイスです。衛星を運用する企業・団体は世界中に散らばる他の地上局を通して衛星とより多くの情報を送受信でき、地上局の持ち主は非稼働時間を売ることで初期投資にかかった費用を少しは相殺できます」