農業総合研究所・及川智正社長【拡大】
スーパーマーケットで農産物直売所を運営する農業総合研究所。農家、小売店、消費者の3者にとってメリットのある“三方良し”の新しい流通の仕組みを作り上げ、収益を伸ばしている。昨年6月、東証マザーズ市場に農業ベンチャーとして初の上場を果たした。及川智正社長は「稼げる産業にすることでビジネスとしての魅力を高め、持続可能な農業を実現する」のが夢だ。
--事業の特徴と強みは
「農産物を農家が持ち込めるよう、全国各地に当社や業務委託先で集荷場を開設している。商品は農家自身が価格と販売するスーパーを決めて、バーコードシールを発券する。その後、出荷して販売する。農業にITを融合させていることが特徴だ。農家の携帯端末にはスーパーのレジ情報をデータ加工し、商品の売れ行き、商品ロス率、価格の比較などの情報を送信している。情報開示することで、農家の販売意欲を高めている」
--ビジネスモデルは
「商品が売れた場合は販売価格の60~65%を農家に支払い、残りの35~40%を当社とスーパーで折半する。従来の販路の場合、農業協同組合(JA)は販売価格の約3割を生産者に渡すだけ。当社の場合、農家にJAの2倍近い収益をもたらしている。また直売の道の駅では農家が約8割を得られるが、生産者が自ら商品を搬入したり搬出したりする手間がかかっている」
--従来の流通と比べた優位性は
「形が悪い、傷があるといったこれまで廃棄するしかなかった作物でも出荷できる。翌朝には店頭に並ぶので、消費者は新鮮な野菜を買える。スーパーにとっては、農家の名前が分かる安心・安全な野菜で店舗の魅力を高めることになり集客を図れる。農家、消費者、小売店の3者にとってメリットがある」