■財産権の対象外 管理に細心注意が必要
先日、横浜市議会でインターネットで蓄積された情報「ビッグデータ」の活用を市に求める条例が可決されたと報じられた。昨今、ビッグデータ利活用に関する取り組みは活発で、この手の報道も枚挙にいとまがない。ところが、企業などが保有しているビッグデータが、必ずしも財産権として保護されるものでないことは意外と知られていない。
まずビッグデータとは何か。正確な定義は難しいが、現代用語辞典の知恵蔵では「インターネットの普及や、コンピューターの処理速度の向上などに伴い生成される、大容量のデジタルデータを指す」とされている。総務省によれば、「ソーシャルメディアデータ」「マルチメディアデータ」「ウェブサイトデータ」「センサーデータ」「オペレーションデータ」「ログデータ」「オフィスデータ」「カスタマーデータ」などが含まれる。
これらのうち、ソーシャルメディア、マルチメディア、ウェブサイト、オフィスの各データで文章化されているものは、場合によっては著作権法で保護される。フェイスブックに利用者が書き込んでいるコメントなども場合によっては利用者に著作権が発生し、複製行為について自らの著作権を行使できる。
では、ログ、オペレーション、カスタマー、センサーなど単なる数値や文字の羅列など、それ自体では意味をなさないデータについてはどうか。いわゆるビッグデータといえば、これらのデータの集合をイメージする人が多い。企業はこれらのビッグデータを有効活用しようとしているが、法律上保護されるのだろうか。個人情報保護法が絡むと論旨がぼやけるので、ここでは個人情報ではないことを前提とする。
単なるデータは、特許権、実用新案権や意匠権の対象ともならないし、思想や感情を表現したものでもないから著作権の対象にもならない。有体物でもないから所有権の対象にもならない。