稚内信用金庫の本店(ブルームバーグ)【拡大】
日本最北の地に拠点を構える稚内信用金庫。地域密着の金融機関でありながら、資産に占める有価証券投資の比率が高く、西の高知信用金庫とともに異色の存在だ。増田雅俊理事長は、日本銀行の異次元緩和について「終わるときも経験したことのない異次元のことが起こるのではないか」と述べ、「自分たちも巻き込まれないようにしないといけない」と身構える。
◆潤沢な内部留保
稚内信金の有価証券投資は2824億円(今年3月末時点)と預金の68%を占める。一方、貸し出しは872億円で、預金に占める比率を示す預貸率は21%と全信用金庫平均(50%程度)を大きく下回る。有事に備え自己資本は499億円、率にして57%と潤沢な内部留保を抱える。
預貸率8.6%、自己資本比率47%(今年3月末)の高知信金とよく比較されるが、投資哲学は異なる。増田氏はインタビューで、株式や社債にも投資し、機動的な証券運用を行う高知信金に対し、「短期的なディーリングは必要ないのでやらない。ほとんどが国債と地方債の持ち切りで、社債すら買わない」と語った。
増田氏は1978年に入庫、84年に営業店から資金証券部に異動した。円債、株、米国債、デリバティブなどの投資を幅広く経験したが、「結論はシンプル・イズ・ベストで基本は円債」だった。90年代のバブル崩壊以降は、低リスクの資産で流動性を確保し、単年度決算がきちんとできれば良しという考えで25年たったが、昨年1月のマイナス金利決定以降、「それが通用しなくなった」と言う。