JR九州は、昭和62年の会社発足から30年を迎えた。厳しい経営環境での船出だったが、輸送力や接客サービスの向上に取り組み、豪華寝台列車「ななつ星in九州」など新たな魅力を生み出した。度重なる災害からの復旧、まちづくり企業への成長など、同社が発行した30年史から、その歩みを振り返った。(高瀬真由子)
リーマン・ショックの余波残る中目指した「世界最高の旅」
JR九州の代名詞となった「ななつ星」は、平成25年10月に運行を開始した。「九州を巡る豪華寝台列車をつくりたい」。当時社長の唐池恒二会長の思いが、原動力だった。
「ビジネスとして成り立つのか」。構想を提示した21年は、リーマン・ショックの余波が残っていた。それでも世界最高の旅を目指し、車両制作が始まった。
「本当の贅沢(ぜいたく)」を追求した。驚きや感動を与える料理に加え、有田焼や大川組子など、九州の匠の技を内装に取り入れた。
妥協は一切なかった。厨房(ちゅうぼう)の配置は3度も変えた。「あなたたちは本当につくる気があるのか」。車両メーカーの設計担当者はあきれたという。
シャワーブースは、スタッフがメーカーに出向き、気持ちのよい水量を自分で浴びて検証した。