「ななつ星」のJR九州、発足30年 リーマン・ショック余波の中で目指した世界最高の旅 (1/3ページ)

「ななつ星in九州」は沿線住民の歓迎が大きな魅力になっている
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  • 平成24年7月の豪雨で、豊肥線のトンネルから押し流されたレール
  • 「SL人吉」プロジェクトに取り組んだメンバー
  • 全線開業が間近に迫り、九州新幹線のホームに大勢の人が集まった。実際の開業は東日本大震災の発生翌日ということで祝典を取りやめた
  • 株式上場を果たした平成28年10月、東京証券取引所には歴代社長らが集まった

 JR九州は、昭和62年の会社発足から30年を迎えた。厳しい経営環境での船出だったが、輸送力や接客サービスの向上に取り組み、豪華寝台列車「ななつ星in九州」など新たな魅力を生み出した。度重なる災害からの復旧、まちづくり企業への成長など、同社が発行した30年史から、その歩みを振り返った。(高瀬真由子)

 リーマン・ショックの余波残る中目指した「世界最高の旅」

 JR九州の代名詞となった「ななつ星」は、平成25年10月に運行を開始した。「九州を巡る豪華寝台列車をつくりたい」。当時社長の唐池恒二会長の思いが、原動力だった。

 「ビジネスとして成り立つのか」。構想を提示した21年は、リーマン・ショックの余波が残っていた。それでも世界最高の旅を目指し、車両制作が始まった。

 「本当の贅沢(ぜいたく)」を追求した。驚きや感動を与える料理に加え、有田焼や大川組子など、九州の匠の技を内装に取り入れた。

 妥協は一切なかった。厨房(ちゅうぼう)の配置は3度も変えた。「あなたたちは本当につくる気があるのか」。車両メーカーの設計担当者はあきれたという。

 シャワーブースは、スタッフがメーカーに出向き、気持ちのよい水量を自分で浴びて検証した。

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