三菱UFJ「約1万人削減」 銀行員受難の時代がくる (1/3ページ)

 銀行員が再び受難の時代を迎えようとしている。各行は低金利による収益低下とフィンテックの普及(異業種の参入)という2つの課題に直面しており、大幅なコスト削減が必至の状況だ。銀行業界は近い将来、大量の人員削減を余儀なくされる可能性が高いだろう。[加谷珪一,ITmedia]

 銀行業界に激震が走った。三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJグループ)の平野信行社長が9月、「事務作業の自動化やデジタル化によって9500人相当の労働力を削減する」と発言したからだ。

 9500人というとグループの中核企業である三菱東京UFJ銀行の従業員の3割に相当する人数である。

 平野氏は、あくまで「9500人相当の労働力を削減する」と言っただけで、9500人をリストラするといったわけではない。余った労働力はよりクリエイティブな業務にシフトするとのことだが、皆がクリエイティブな業務に従事できるとは限らない。実質的な人員削減策と受け止めた銀行員は少なくないだろう。

 銀行員といえば、かつては高給取りで知られており、業務も「信用が第一」ということで、あらゆる部分にふんだんにコストをかけることが許されてきた。バブル崩壊後の不良債権問題から大手行が経営破綻したことなどもあり、銀行員の年収は大幅に下がったといわれる。それでも、銀行員の年収はまだまだ高い部類に入るし、銀行のコストのかけ方は他業種とは比較にならない。

 だがここ数年、2つの大きな波が銀行業界に押し寄せており、従来の環境を維持することが難しくなってきた。その波とは「低金利」と「フィンテック」である。

 量的緩和策の実施によって低金利化が進み、銀行は融資業務で利ざや(預金金利と貸出金利の差)を稼ぐことが難しくなっている。銀行の収益力は年々低下しており、従来の利益を維持するためには、コストを削減するしか方法がなくなりつつある。さらに、ダブルパンチとなっているのがフィンテックの進展である。

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