また、電池など電動車関連の研究開発について寺師氏は、30年までに計1兆5000億円を投資する方針を明らかにした。現行のリチウムイオン電池だけでなく、大容量で安全性にも優れる次世代の「全固体電池」の開発も進め、20年代前半までの実用化を目指す。
EVをめぐっては、国家間の思惑も複雑だ。もともと、トヨタなどがEVへの対応を迫られている背景には、中国や米カリフォルニア州などで導入される厳しい環境規制がある。EV向け電池については、自国産業育成を視野に中国政府が巨額投資を促しており、今後、外部から調達する場合は中国メーカーが主要な選択肢となる公算が大きい。ただ、ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「日本メーカーとして、中国市場に安定調達を依存できない。信頼できる対抗勢力をつくることが重要で、トヨタとパナソニックの提携の意義は大きい」と読み解く。
電動化への視界が晴れたトヨタだが、課題は収益性だ。新たな投資がかさむ一方、販売する車の大部分は電動車に置き換わるだけで、大きく増えない可能性がある。トヨタ幹部は「今の生産技術で電動化を進めれば収益は下がる。大幅な進化が必要だ」と打ち明ける。
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■トヨタの今後の電動車戦略
2020年 中国で電気自動車(EV)を投入
20年代前半 日本、インド、米国、欧州でもEVを発売。EVを10車種以上に拡大
25年頃まで 世界で販売する車種を電動専用車か電動グレード設定車に(エンジン車のみの車種はゼロ)
30年 電動車の販売を年550万台以上に(新車販売台数の半数以上)
50年 エンジンだけで走る自動車の販売をほぼゼロに(新車の二酸化炭素排出量を10年比で90%削減)
※電動車はEV、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)