【高論卓説】大学院増加に警鐘 収入や体裁にこだわるなら質的低下 (1/3ページ)

日体大理事長の松浪健四郎氏
日体大理事長の松浪健四郎氏【拡大】

 大学院に進学して体育・スポーツ史を専門的に学びたいと考えていた1970年当時、この分野の研究科を持つのは東大、東京教育大(現筑波大)、日大しかなかった。現在では体育・スポーツ科学系の学部を持つほとんどの大学は大学院を設置する。大学教員には修士号や博士号の学位が求められるようになったことに加え、大学院を設置することで、文部科学省からの補助金が増額される理由にもよる。また、大学としての評価が高まる一因ともなろう。

 大学院の授業を担当する教員は、学部の教員よりも研究業績が問われ、格が上とされる。体育・スポーツ科学の分野は、日本では新しい学問であったがため、容易に優秀な教授陣をそろえることができなかった。大学院を設置するのが難しかったのである。

 数年前から大学院への進学者は増加傾向にあり、学部だけの学問では不十分と認識する学生が多くなっている。ジャンルが細分化され、より高度な知識を身につけるには大学院へ進むべきだと考えるのだ。先進国として研究者を養成する義務が大学にあり、一流大学としての体裁を整えるためにも各大学は大学院を設置する。

 国立大教授の定年は、60~63歳。天下り先として定年が70歳の私大を選ぶ。優秀な教授は、私大の新設学部や大学院の柱となり、文科省の設置審をパスする。岡山理科大の獣医学部教授が、高齢者が多いと指摘されたのは、国立大を終えた教授が多かったからだ。

大学院の発展こそが国の研究力を高める