■20年代には常時経常利益3000億円台へ
--昨年は原油価格も為替も安定していた
「原油はシェールオイルが上値を抑える一方、OPEC(石油輸出国機構)が減産で合意しているので、1バレル=50~60ドルで安定している。為替も1ドル=110円前後で落ち着いている。当社は1円の円高で営業利益が約25億円減るので、為替の安定はプラスだ」
--サウジアラビアの石油化学コンビナート「ペトロ・ラービグ」が利益を出し始めた
「2009年の操業開始から苦節8年になったが、ようやく利益が出るようになった。昨年3月以降はフル稼働状態で、17年は大幅な黒字になりそうだ」
--エネルギー・機能材料事業では電気自動車(EV)への対応を強化している
「リチウムイオン2次電池材料のセパレーター(絶縁材)は年産能力を1億平方メートルから4億平方メートルに増やしつつあり、正極材分野への進出も目指している。今後は自動車の軽量化も重要になるが、当社には耐熱性などに優れた樹脂の『スーパーエンプラ』もある」
--有機ELディスプレー分野も有望だ
「むしろ後発だった液晶材料と違い、有機ELでは03年から高分子発光材料の研究を行ってきた。有機ELへのシフトに抵抗はない。ディスプレー材料の売上高に占める有機ELの割合を、現在の4分の1から18年は3分の1、20年には半分に高める」
--米国でシェールガスから石化原料を生産する動きが本格化する
「大型プラントが相次ぎ稼働しつつあり、アジアにも輸出される見通しだ。日本の化学産業にも、18年度後半ぐらいから影響が出てくるのではないか。ナフサ(粗製ガソリン)から石化原料を作る日本は、シェールガスよりも幅広い製品を生み出せる点を強みにしていくことになるだろう」
--18年度は中期計画の最終年度にあたる
「(連結売上高2兆5000億円、同経常利益2100億円の)目標は射程圏内にある。利益目標については楽に越えられる。よほどの逆風が吹かない限り、常時2000億円を稼ぐ力はついた。次は20年代の早期に3000億円台を狙いたい」
--今年の抱負は
「社員向けに今年の一文字として『挑』という字を揮毫(きごう)した。業績は安定しているが、(中東などの)地政学リスクがあるほか、人工知能(AI)などの技術革新でモノづくりがどう変わるか分からない。社員には気を引き締め、新しいことに挑戦してほしい」
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【プロフィル】十倉雅和
とくら・まさかず 東大経卒。1974年住友化学工業(現住友化学)入社。2003年執行役員、06年常務、09年専務などを経て、11年4月から現職。兵庫県出身。