【遊技産業の視点 Weekly View】


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 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表 LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳

 ■「依存症」という言葉の乱用が招くもの

 IR実施法成立に向けた動きのなか、その前段階としてギャンブル等依存症対策基本法案の成立が控えている。そのような背景で、政府は昨年12月25日にギャンブル依存症対策に関する関係省庁会議を開き、公営ギャンブルやパチンコの事業者に対し、家族から申告があれば本人の同意がなくてもサービス提供を制限する仕組みを設けるよう要請することを申し合わせた。なお、これについて遊技業界では、既に12月1日付で「自己申告プログラム・家族申告プログラム」の運用をスタートさせている。さらに、パチンコ・パチスロ依存問題電話相談機関の対応時間を拡充したほか、経済的問題などを併せて抱える人に対しては司法書士や精神保健福祉士などを相談員とする対面による依存問題無料相談会を10月から継続的に実施。加えて、パチンコホールの従業員が日々の接客を通じて適正遊技を促す「安心パチンコ・パチスロアドバイザー制度」の運用を12月19日から全国的にスタートさせた。他業界では、全国銀行協会が12月上旬、個人に無担保で融資するカードローンについてギャンブル依存症の人への貸し付けを自粛する制度を導入する方針を明らかにしたのが印象的だが、年末年始も“ギャンブル依存”をキーワードにさまざまな動向が確認された。

 一方で、残念な報道姿勢も確認された。地元のギャンブル依存関連団体を紹介する地方紙の記事に「国内のギャンブル依存症患者は300万人超といわれる」と、当該依存団体の発言をうのみにした記載があった。だが、320万人という数値は厚生労働省の1万人調査における「生涯のうちに1度でもギャンブル依存症が疑われる状態になった人」であり、直近1年間のこの数値は70万人。さらに言えば70万人全てが医療機関で治療を受けている“患者”ではない。

 現在、テレビ番組でもまるでブームのように“依存症”という言葉が適切・不適切にかかわらず用いられている。これにより“依存”の実態がさらに曖昧になり、世間の誤解を促しかねない。依存症への適切な対応を導くためにも、少なくともメディアにおいては、正確な数値や知識に基づく発信が求められる。

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【プロフィル】濱口理佳

 はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。