中西経団連、榊原路線を継承 近すぎた距離感、政権にモノ言えるか

会見後、経団連の榊原定征会長(右)と握手する中西宏明次期会長=13日午後、東京都千代田区
会見後、経団連の榊原定征会長(右)と握手する中西宏明次期会長=13日午後、東京都千代田区【拡大】

 経団連次期会長に就任する中西宏明氏は、榊原定征氏が進めてきた安倍晋三政権との連携路線を継承する考えだ。ただ、経済界からは「榊原氏は政権との関係が近すぎ、言うべきことを言えなかった」との指摘もあり、政権との距離感が問われそうだ。

 批判や異論難しく

 榊原氏は2014年の会長就任直後から、「デフレ経済の緊急事態の中で、政治と経済が車の両輪でなくてはならない」と強調。経済界の求める政策実現に取り組んだ。前任の米倉弘昌氏が12年の衆院選直前、当時野党の自民党総裁だった安倍氏が公約した金融緩和策を「大胆というより無鉄砲」などと批判し、その後誕生した安倍政権との関係が悪化したのと好対照だ。

 榊原氏は安倍政権下で経済財政諮問会議の民間議員などに就任。経団連の考えを政権の考えや政策に反映させるルートを確立した。賃上げや子育て支援などでは、安倍首相が榊原氏に直接要請し、それを受けて榊原氏が企業に協力を呼び掛けるなどして、経団連が政権の要望を請け負う関係が年々強化された。

 しかしその一方で、経団連は政権批判や経済界として政策に異論を挟むことができなくなっていた。特にこうした関係が顕著だったのは、榊原氏が「命を懸ける」と公言してきた財政再建問題だ。榊原氏は消費税率の着実な引き上げを求めてきたが、安倍首相が16年6月に消費税率10%への引き上げを再延期すると決めると、「極めて重い政治判断を尊重する」と、考えを180度転換。経済界から批判を受けた。

 「利益誘導」の懸念

 個人的に安倍首相と親しい中西氏にとって、政権との関係は難問だ。中西氏の出身会社である日立はインフラ輸出などで政府との関わりが深く、英国で手掛ける原子力発電所プロジェクトは政府が支援する方向で調整が進む。デフレ経済からの完全脱却の最終局面を迎える中で政経一体の取り組みは必要だが、中西氏と政府の距離感によっては、日立と政府の関係が「利益誘導」と問題視される可能性もある。これに対し、中西氏は経団連と政権の距離感を慎重に探る姿勢を示している。(平尾孝)