日本郵政グループ、ベンチャー支援で相乗効果 販路提供と配達最適化 (3/3ページ)

浅草郵便局内の物販コーナー=東京都台東区
浅草郵便局内の物販コーナー=東京都台東区【拡大】

  • 東京中央郵便局で販売されているユカイ工学の「BOCCO(ボッコ)」

 ■JR各社が手本、独自の道模索

 ベンチャー企業にとって、販路開拓や実用化に向けた実証研究は不可欠だが、巨額の資金が必要となる。日本郵政グループの持ち株会社である日本郵政は昨年11月、全額出資でベンチャー投資子会社「日本郵政キャピタル」を設立した。

 日本郵政傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命も2月9日付で「JPインベストメント」を共同で設立。両社以外の投資家にも出資を募り、総額1200億円規模のベンチャー企業を投資対象としたファンド(基金)を立ち上げる。こちらは主に金融とITを融合した新しいサービス「フィンテック」を開発するベンチャー企業を投資対象としている。

 日本郵政グループが目指すのは「トータル生活サポート企業」。これまでの郵便、貯金、簡易保険に限らない多様なサービスの提供を目指しており、ベンチャー支援もその一つだ。開発した技術やサービスの実証実験、販路開拓に全国の郵便局網や10万台超の郵便配達車両などを活用できる。

 国の直轄事業から公社化を経て、2007年の民営化で発足した日本郵政グループ。「官による民業圧迫」との批判から、優良事業の住宅ローンや企業融資ができないことも、ベンチャー投資に参入した背景の一つだ。民営化から約30年が過ぎたJR東日本とJR西日本は、駅構内の空きスペースに商業施設を誘致したり、JRグループ外の企業に呼び掛けてIC乗車券を使える小売店などを増やす。鉄道会社の枠を超え、消費者に密着したビジネスを展開してきた。

 日本郵政グループはJR各社をお手本にしつつ、独自の道を模索する。日本郵便の横山邦男社長は「経営資源やノウハウとベンチャーのアイデアが化学反応を起こすことで、世の中をわくわくさせるような価値創造につなげたい」と話す。(松村信仁)