【ハザードマップ】タカハシ工業/丸浜一水産 市場の急変で借入金だけが残る

 ▼タカハシ工業 タカハシ工業は3月2日、前橋地裁から破産開始決定を受けた。同社は当初、プラスチック塗装を中心としていたが、プラスチック機構部品の一貫生産体制を確立し、自動車部品に加えて1996年頃から携帯電話機向けを手掛け、事業規模を拡大。本社工場ほか、98年に5億円で掛川工場(静岡県)、2001年に15億円を投じて森工場(同)を開設し生産体制を強化した。

 投資効果と好調な受注を背景に01年6月期には売上高約25億円を計上した。しかし、その後はスマートフォン市場の台頭や、海外への生産シフトなどで携帯電話機向けの受注が大きく後退し、12年6月期以降の売上高は10億円を割り込んだ。

 パチンコなどの遊戯機器部品、自動車部品などへシフトして業容維持に努めたが、携帯電話機部品の撤退に伴って16年6月期の売上高は3億8903万円まで低下。遊戯機器部品の受注増や自動車部品の新規取引先獲得などで17年6月期は売上高が回復したものの、不良品の発生などで営業赤字を計上した。

 債務免除などで、ここ数期は黒字を維持していたが、過去の赤字から債務超過に陥り、設備関連を中心に17年6月期には借入額が20億円に膨らんだ。18年6月期も業績は好転せず、借り入れ返済のめどが立たないことから、今回の措置となった。

 ▼丸浜一水産 丸浜一水産は2月21日、釧路地裁根室支部に破産を申請した。地元近海で水揚げされるサンマ、カレイ、カジカなどの鮮魚を主力として、北海道内にある水産物荷受会社を中心に販路を構築した。1991年12月期は売上高6億6021万円を計上したが、その後の不漁や競争激化が響き2014年12月期の売上高は2億1961万円に低下。さらに過年の損失処理の実施に伴い債務超過に転落した。

 記録的な不漁が続き、16年12月期の売上高は1億9128万円に減少。金融債務の返済のリスケジュールなどでしのいできたものの、資金繰りに行き詰まった。

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【会社概要】タカハシ工業

 ▽本社=群馬県佐波郡玉村町

 ▽設立=1986年4月

 ▽資本金=6000万円

 ▽負債額=約19億7000万円

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【会社概要】丸浜一水産

 ▽本社=北海道根室市

 ▽設立=1981年2月

 ▽資本金=1000万円

 ▽負債額=約1億6000万円

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 <チェックポイント>

 タカハシ工業は受注拡大時の設備投資に伴う借入負担が重く、近年はリスケ(返済猶予)でしのいでいた。「ガラケー」からスマホへの市場の急激な変化で、遊技機や住設機器などへの転換で再起を図っていたが、焼け石に水。売り上げはなくなり、工場新設時の借入金だけが残る皮肉な結果となった。

 丸浜一水産はここ数年続いてきた近海サンマ漁の不振が経営を直撃。赤字計上と債務超過が続き、経営を支えきれなかった。北海道では同社に限らず、不漁によるコスト負担が水産業者を襲う。体力の乏しい中小企業では対応に限界があり、行政支援などの対応も必要な差し迫った状況となっている。(東京商工リサーチ常務情報本部長 友田信男)