【ガバナンス経営の最前線】(4-1)改革の道 手本になる取り組み

「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2017」の大賞を受賞し宮内義彦会長(左)からトロフィーを受けとる花王の澤田道隆社長=2月19日、東京都千代田区の帝国ホテル
「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2017」の大賞を受賞し宮内義彦会長(左)からトロフィーを受けとる花王の澤田道隆社長=2月19日、東京都千代田区の帝国ホテル【拡大】

  • 東京都知事賞を受賞した野村総合研究所の嶋本正会長(右)と小池百合子都知事=2月19日、東京都千代田区の帝国ホテル

 企業経営者や経営専門家・研究者、機関投資家などで組織する日本取締役協会(会長・宮内義彦オリックスシニアチェアマン)は、表彰制度「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー(ガバナンス表彰)2017」のグランドプライズカンパニー(大賞企業)に花王を、ウィナーカンパニー(入賞企業)に参天製薬と第一三共を選定、2月19日に東京・内幸町の帝国ホテルで表彰式を行った。2015年にコーポレートガバナンス・コードの運用がはじまってから3年。8割以上の上場企業でコードが定める“形式”は整った。では、この仕組みをどう生かし、どう結果に結びつけるのか。今回の受賞企業にその最前線を学ぶ。(青山博美)

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 ■コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2017 大賞企業に花王

 コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤーは、ガバナンスの仕組みを活用することで業績や企業価値の向上を実現している好例を示す表彰制度だ。

 コーポレートガバナンス・コードが適用される東京証券取引所市場第一部に株式を上場する企業は全2010社(2017年8月1日時点、22日時点では2079社)。2017年は、これら上場企業の大半でコードの示す“形式”が整った格好だ。

 しかし、コードの規定は最小限のもの。形式面でもまだまだ十分な内容ではないが、その運用ということになるとほとんど手つかずの状態といえるかもしれない。“形式”から“実質”への深化はこれからが本番だろう。とはいえ、実際にどう活用していくのか、という具体策はイメージしづらい。コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤーは、その“手本”足り得る実例を抽出して表彰するものだ。

 選定は日本野球機構会長でプロ野球組織コミッショナーである斉藤惇氏が委員長を務める審査委員会が行った。審査は、2015~17年を通じて社外取締役3人以上を選任している企業356社が対象となった。

 このうち、今回は稼ぐ力の指標として非金融業では3期平均の自己資本利益率(ROE)10%以上、総資産利益率(ROA)5%以上=金融業は同2%以上=設定したところで76社に絞り込まれた。さらに、指名・報酬委員会の設置状況や時価総額、営業利益の安定性、株主ら利害関係者への配慮などを総合的に評価し3社を選出した。

 その後、審査委員がこれら3社の経営最高責任者(CEO)にインタビュー調査を行い、大賞企業を選んだ。

 大賞企業の花王について、斉藤審査委員長は「守りのガバナンスという面で自己に厳しい姿勢を取締役会も含めて徹底。内部統制も形だけではなく運用に重点が置かれている。攻めの面では、澤田道隆社長が取締役会を夢の実現の場と位置付け、社外取締役との議論をエンジョイしているといい、取締役会が機能している好例だ。高いステージに進んでいる」と評した。ガバナンスのリーダー、手本となる企業という点で、その取り組みが注目されている。

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 ■東京都知事賞に野村総合研究所

 今回から特別賞として東京都知事賞が加わった。東京都が推進する「国際金融都市・東京」構想では、金融による社会問題解決の一つの柱として、環境・社会・ガバナンスからなるESG投資を重視している。今回、コーポレートガバナンスが優れていることに加え、環境対応、女性活躍推進、ダイバーシティ対応、働き方改革などのESG活動に対して積極的な企業が選ばれた。

 第1回目の受賞企業は野村総合研究所。表彰式には小池百合子知事が出席し、嶋本正・野村総合研究所会長に賞状と記念品として多摩産杉製の額縁が授与された。

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【用語解説】日本取締役協会

 コーポレートガバナンスを充実することにより、企業活動を発展させ、日本経済を元気にすることを目的に2002年設立された。経営者、専門家、研究者、独立取締役、機関投資家など、経営に携わる人たちで構成する。設立以来、コーポレートガバナンスに関係する制度創設を提言、これに向けた研究も続けてきた。仕組みができた現在では、新任取締役に対するセミナーなどを開催。取締役や取締役会の本来の役割をはじめ、仕組みを業績向上にどう結びついていくのかを説いてきた。15年には、コーポレートガバナンスを用いて中長期的に健全な成長を遂げている企業を表彰する「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」を創設。仕組みの活用で好業績を実現している“具体例”を示し、この取り組みの実効的な普及を後押ししている。