【ガバナンス経営の最前線】(4-2)求められる形式から実質への深化

表彰式後の懇親会で乾杯する受賞者ら=2月19日、東京都千代田区の帝国ホテル
表彰式後の懇親会で乾杯する受賞者ら=2月19日、東京都千代田区の帝国ホテル【拡大】

  • 審査結果への所感を述べる審査委員長の斉藤惇氏
  • 審査結果を講評する審査委員の伊藤邦雄氏

 コーポレートガバナンス(企業統治)の仕組みを通じて日本企業に稼ぐ力を…

 こんな旗印の下で「監査等委員会設置会社」制度を盛り込んだ改正会社法が施行されたのは2015年5月。これに続いて、同年7月にはコーポレートガバナンス・コードの適用もはじまった。3月期の企業が今年度の株主総会を実施するころには、ともに3年目を迎えることになる。

 ◆3年で大きく進展

 コーポレートガバナンス・コードは、上場企業に複数人の独立取締役(社外取締役)の設置などを求めるもので、批准しない企業にはその理由説明を求めている。これらの施策により、東証一部上場企業(合計で約2000社)の場合では15年7月時点で48%だった「2人以上の独立取締役を設置する企業」が17年7月には88%にまで拡大。15年新設の「監査等委員会設置会社」も20%を超えるまでに増加している(東京証券取引所調べ)。日本のコーポレートガバナンス環境は、元年といわれた15年からわずか3年で大きく進展した。

 半面で、15年以降は東芝や東洋ゴム、神戸製鋼所、三菱自動車、東レ、三菱マテリアルなど、グループ会社も含めれば実に多くの名門企業でさまざまな不正が発覚した。

 わが国のコーポレートガバナンスの中核的な目的は不正の防止ではなく、“稼ぐ力”の向上だ。加えて、それらの不正には以前から行われていたものも多く、ガバナンスの向上が発覚を促したと考えることもできる。とはいえ、これだけの不祥事がこうした形で噴出し続けている実情からは疑念も沸く。

 現状は“形式を整えただけで実質を伴っていない”ということではないのか。

 ◆仕組みの強化続く

 会社法やコーポレートガバナンス・コード、投資家の行動指針であるスチュワードシップ・コードなど、企業のガバナンスをめぐる仕組みの強化は今年以降も続く。独立取締役の増員や議決権行使に関する情報公開、取締役や最高経営責任者の選解任基準などがコードや会社法に盛り込まれていくことになるかもしれない。しかし、仕組みだけで不正の抑止や稼ぐ力の向上は見込めない。経営トップをはじめ企業全体がその主旨を理解するとともに、この仕組みを“稼働”させる必要がある。“形式だけ”では意味がないのだ。

 ◆効果生む改革への挑戦

 日本取締役協会が選ぶ「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」の受賞企業は、この仕組みを“稼ぐ力”を高めるために活用している好例である。その実現には経営者の意識改革、組織の風土改革をも伴うが、これらの改革への挑戦は現に効果を生む。

 そのための研究や啓発を手掛ける日本取締役協会の会員企業は、コーポレートガバナンスによる稼ぐ力の向上に挑戦、その効果が株価にも表れはじめている。SMBC日興証券が集計したところ、会員企業の平均株価の推移は、東証一部上場全株式の動きを示す東証株価指数(TOPIX)の推移を上回っていることがわかってきた。しかも、その差は拡大傾向にある。

 制度上の強化も続くコーポレートガバナンス。その真の活用は、企業の収益力の強化につながる。形式から実質へという“深化”がいま、強く求められている。