【ガバナンス経営の最前線】(4-3)たゆまぬ努力が実を結ぶ

授賞式で自社の取り組みを紹介する花王の澤田道隆社長
授賞式で自社の取り組みを紹介する花王の澤田道隆社長【拡大】

  • 審査委員の伊藤邦雄氏
  • 第一三共の中山讓治会長
  • 花王の澤田道隆社長
  • 参天製薬の黒川明社長

 コーポレートガバナンスの仕組みを活用すると経営はどう変わるのか。本当に価値のある強い企業になれるのか。「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2017」の受賞企業はその効果を体現する具体例であり、手本とすべき事例でもある。表彰式で登壇した審査委員の伊藤邦雄・一橋大学大学院商学研究科特任教授による講評を軸に、コーポレートガバナンスの最先端を垣間見る。

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 ■記録破りの“トッププレーヤー”

 □Grand Prize Company 花王

 審査委員会は花王について「企業価値経営におけるフェデラー並み」と表現した。フェデラーはここ100年で築かれたテニス史上の数々の記録を塗り替え、史上最高のテニスプレーヤーと評されている。それぐらいの実績があるという例えだ。

 審査委員の伊藤邦雄氏はまず、昨年9月の小田原工場における一部の消防法不適合事例への対応などに触れ、「迅速にその事実を公表するとともに、5回もの臨時取締役会を開催して対応を議論している。常に危機感を持ち、長いスパンで戦略を考えており、そのプロセスに社外取締役を巻き込んでいるのが大変印象的だった」と評した。審査の席上でも「社外取締役との議論を楽しむまでの次元に達し、別格である」という意見があった。

 「正道を歩む」という理念の下で、独自に攻めと守りのガバナンスを進化させてきた。その結果培われた企業風土は企業の永続、価値の向上に向け、さらなるガバナンスの進化を促している。

 花王の澤田道隆社長は「花王には、現状に満足せず常に革新を続ける『絶えざる革新』という経営理念がある。本業であるモノづくりはもちろん、ガバナンスにおいても過去からその実践を続けてきた。そして、経営の夢や思いを、取締役会が守りと攻めのガバナンスで支えてくれた」と述べた。あわせて「今後は財務的な面に限らず、ESGなど非財務の活動についても投資と位置付けて取り組みたい」との考えを示した。

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 ■他社に例のない取り組み

 □Winner Company 参天製薬

 参天製薬については「ユニークなガバナンス体制」と総評された。これは他社に例のない取り組みがたくさんある、ということを表している。と同時に伊藤氏は「社外取締役を使い込んでいる」という表現で社外取締役の大きな活躍を紹介した。同社では社外取締役が常務会などにも出席し、執行側が抱える目標や課題を共有。「外部や投資家、グローバルな目線、形より実質という目線の実現に向けた密なコミュニケーションが実践されている」と評価した。

 参天製薬の黒川明社長兼CEOも、受賞のあいさつで「社内のコミュニケーションを充実しないとガバナンスは発揮できない」と強調。「今後もユニークさを追求し、ガバナンスを磨いていく」と締めくくった。

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 ■「攻め」と「守り」きっちり実践

 □Winner Company 第一三共

 第一三共については「やるべきことをきちんとやっている。攻めと守り(のガバナンス)をきっちりと両面で実践している」という点が評価された。伊藤氏は「コーポレートガバナンスという面ではこの姿勢は重要なポイントだ」と強調。合わせて「社外取締役による発言が非常に活発であることも好印象だ」と評した。経営トップには「思ったことを言わない組織は成長できない」という考えが根付いている。

 受賞に際し、第一三共の中山讓治会長兼CEOは「私にとってコーポレートガバナンスは、正しい問いかけをもらえるシステム。社外取締役からの『そもそも一体それは何なのか?』といった根源的な問いにきちんと応えられないような案件は進めるべきではないと思う。完成形に向けて、今後も社を挙げて努力を続けたい」とコメントした。

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 ■コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2017

 主催 一般社団法人 日本取締役協会

 後援 金融庁、経済産業省、法務省、東京都、東京証券取引所/日本取引所グループ

 協力 日本公認会計士協会、一般社団法人 日本IR協議会、Asian Corporate Governance Association

 データ分析協力 みさき投資

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 ■審査委員の顔ぶれ

 委員長=斉藤惇氏(日本野球機構会長・プロ野球組織コミッショナー)▽委員=バーバラ・ジャッジ氏(英国取締役協会会長)、井伊重之氏(産経新聞論説委員)、伊藤邦雄氏(一橋大学CFO教育研究センター長、一橋大学大学院商学研究科特任教授)、太田洋氏(西村あさひ法律事務所パートナー弁護士)、冨山和彦氏(日本取締役協会副会長、経営共創基盤代表取締役CEO)、中神康議氏(みさき投資代表取締役社長)