【Bizクリニック】増えるサテライトオフィス活用企業

 □オフィスナビ代表取締役・金本修幸

 働き方の多様化が進み、サテライトオフィスが増えている。サテライトオフィスとは本社から離れた場所に設置されたオフィスのことで、支社や支店と違って必要最低限の機能しかない。拠点に営業マンが1人の場合などは常駐者がいない。そのサテライトオフィスを上手に活用して、働き方改革や地方創生に役立てている企業も多い。

 例えば、富士ゼロックスは東京都港区に本社があり、中央区日本橋、横浜などにサテライトオフィスを設けている。取引先への訪問件数が増え、顧客に対応するスピードも向上したという。また、NTTグループでは、社宅から30分圏内にある千葉県船橋市、埼玉県上尾市、神奈川県鎌倉市にサテライトオフィスを置いた結果、通勤時間の削減など従業員のワークライフバランスが改善したという。企業側も郊外にオフィスを構えることで通勤費と固定費の削減につなげている。労働を量ではなく、質で評価する社内風土が必要になるものの、地方の雇用創出に応用できるのではないだろうか。

 シェアオフィスもサテライトオフィスとして人気がある。共用ラウンジや会議室、複合機、フリードリンクを備えているところが多く、必要最低限の執務スペースを確保している。周囲の人の刺激を受けながら仕事に集中できる。ブランド力があり上質な空間を提供するシェアオフィスは特に人気がある。できれば法人登記が可能なシェアオフィスが望ましい。デメリットとしては、取引先や社内との連絡などで情報漏洩(ろうえい)リスクに備える必要がある。

 地方にオフィスを分散しておくことは自然災害やテロなどに備える事業継続計画(BCP)対策としても有効だ。多拠点を構え、業務のバックアップができるように、サテライトオフィスを設ける企業が増えている。一方、地方に本社がある企業が都心部にサテライトオフィスを置くケースも増えている。ブランド力や認知度が向上し、サービスの提供がしやすくなって、新たな顧客獲得につながるという。

 IT技術の革新によって場所を選ばずに働くことが可能になった。経済のグローバル化が急速に進んでいるうえ、国内では人手不足が叫ばれ、社員の採用を世界中に広げていく企業が増えた。もしかしたら、世界中にいる社員の自宅そのものがサテライトオフィス化していくかもしれない。

 それでも東京都心部では、大型のオフィスビルがまだまだ開発されていく。10年後には、どんな場所でも働く人のいる場所がサテライトオフィスになっていくと予想される中で、都市開発では多くの人々をひきつけるような職・住・学・遊が融合された魅力的な場所づくりが必要になるだろう。サテライトオフィスに注視しながら、都市開発推進の一翼を担っていきたい。

                   ◇

【プロフィル】金本修幸

 かなもと・なおゆき 1993年関西大商中退、地場の不動産会社に入社。住信住宅販売(現・三井住友トラスト不動産)を経て、2002年8月オフィスナビを設立し、現職。オフィス仲介契約は累計約8000件に及ぶ。17年にはシェアオフィスサービス「BIZ SHARE」を札幌、神戸に開設。46歳。大阪府出身。