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 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表、LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳

 ■「装置産業」の枠超え“新たな産業像”描く

 マルハンの201人をはじめ、全国のパチンコホール企業でも数十~百人規模の採用が行われるなか、今年も多くの新卒が遊技業界の扉をたたいた。また象徴的だったのが、女性社員比率の高さだ。パチンコホールの労働環境も、現場では玉箱を運ぶ必要がなくなるなど接客に専念できる環境が整いつつあり、さらに大手ホール企業を中心に女性活躍推進を軸としたダイバーシティーの取り組みが進められている。

 かつての「パチンコ屋」のイメージからはほど遠く、また遊技機を設置して集客を図る「装置産業」とは一線を画した“サービス業”としてのパチンコホールがそこにある。さて、彼らは次世代のパチンコホール像をどのように描いていくのだろうか。

 遊技業界は先般、カジノ実現に向けた動きに伴うギャンブル等依存対策の一環として改正規則が施行された。遊技機の射幸性が大幅に抑制されるなか、今後さらにパチンコホールは売り上げ低迷を余儀なくされる。このような状況を見据えると、これまで「風営法下の許可営業だから」という理由で却下されてきた「地域コミュニティーとしてのパチンコホールの活用」や「サービス業として多角的に経営努力が行える環境の実現」など、“射幸性とは関係のない部分”での規制緩和を求めることが今後の持続可能な産業像を健全に描いていくために求められてくる。もちろん、経営の自由度を高めることは、新卒を含めた“これからの人材”の活躍の場を広げ、パチンコホールの社会における存在意義の強化をもたらすことになる。

 1996年の社会的不適合機撤去の折、業界メディアには「装置産業からサービス産業へ」とのキーワードが踊った。しかし、装置産業の枠を飛び越えることはなく、従来のスタイルが継続されてきた。だがもはや、これまでのやり方を踏襲するだけでは企業運営が成り立たない状況で、多くの雇用を抱える遊技産業を守り、次世代へとつなげていくためには、既存の枠組みから脱却し、あらゆる可能性を求めていかなければならない。

 遊技産業はいま、誰も見たことのない“新たな産業像”を描く時期を迎えている。

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【プロフィル】濱口理佳

 はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。