進行性の固形がんを対象とする抗がん剤「FF-10832」の臨床第I相試験を米国で開始

 富士フイルム株式会社(社長:助野 健児)は、このたび、米国において進行性の固形がんを対象とする抗がん剤「FF-10832」の臨床第I相試験を開始いたしましたのでお知らせいたします。「FF-10832」は、富士フイルムが写真フィルムなどで培った、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術などを活かして、既存の水溶性薬剤である抗がん剤「ゲムシタビン」(*1)をリポソームに内包したリポソーム製剤です。

 ◆詳細はWebページをご覧下さい。
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_1270.html?link=atp

 リポソームとは、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子のことで、体内で必要な量の薬剤を必要な部位に必要なタイミングで送達する技術であるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術の一種です。抗がん剤には、がん組織以外の正常組織に対しても作用し、強い副作用を引き起こすケースがありますが、薬剤をリポソーム製剤にすることで、がん組織に薬剤を選択的に送達し、副作用を抑制して、薬効を高めることができると期待されています。
「FF-10832」は、血中での薬剤の消失半減期(*2)が非常に短い「ゲムシタビン」を、約80nmの均一なサイズのリポソームに内包することで、血中での薬剤の安定性向上、がん組織へ薬剤が集積し長時間滞留するEPR効果(*3)の発揮、がん組織での薬剤放出を可能とします。マウス実験では、リポソーム製剤化していない既存薬を投与した場合と比較して1/60の低投与量でも同剤を大幅に上回る薬効を示し、さらに「ゲムシタビン」では効きにくい種類のがん細胞(ヒト由来)を移植したマウスでも薬効を発揮することも確認しています。今後、富士フイルムは進行性の固形がんを対象とする米国臨床第I相試験において、「FF-10832」の安全性と忍容性、薬物の体内動態、初期の有効性を確認していきます。
富士フイルムは、ナノ分散技術、解析技術、プロセス技術など写真フィルムで培った高度な技術を活用してリポソーム製剤の研究開発を推進しています。現在、既存薬のみならず、次世代医薬品の核酸医薬品や遺伝子治療薬への応用展開も目指した取り組みを行っています。また、リポソーム製剤のグローバルな提供に向けて、富士フイルムグループの富山化学工業の生産拠点に治験薬製造および商業生産を行う工場を建設することを決定。2020年2月の稼働開始に向けて準備を進めています。
今後、富士フイルムは、独自の技術を活かして「がん」などの重点領域で新薬開発に取り組むとともに、新たなドラッグ・デリバリー・システムを開発することで、新たな価値を創出し、社会課題の解決に貢献していきます。

 *1 米国イーライリリー社が開発した抗がん剤(一般名:ゲムシタビン、製品名:ジェムザール)。膵臓がんの第一選択薬として用いられ、そのほかにも幅広いがん(肺がんや卵巣がんなど)に用いられている。
*2 血中薬物濃度が、半分に低下するまでの時間のこと。
*3 がん組織は自らの栄養のため血管を新生させるが、新生血管は未成熟で、正常血管には存在しない血管壁の隙間が存在する。リポソームや高分子などを血中に滞留させると、隙間がない正常な血管壁は透過せず、がん組織周辺のみで血管壁を透過する。また、がん組織ではリンパ組織が未成熟であるため、透過したリポソームや高分子などが排除されにくく、結果的にこれらはがん組織に集積する。これをEPR(enhanced permeability and retention)効果という。 崇城大学DDS研究所特任教授・熊本大学名誉教授の前田浩氏と、国立がん研究センター先端医療開発センター新薬開発分野長の松村保広氏が「がん治療における高分子薬物の血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果の発見」(1986年)において発表。
両氏は論文・引用分析においてトムソン・ロイター社がノーベル賞有力候補者として発表する「トムソン・ロイター引用栄誉賞」を2016年に受賞している。

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