【eco最前線を聞く】環境に優しいバイオエンプラ採用拡大

SUV「CX-5」のフロントグリルにはバイオエンジニアリングプラスチックを採用した(同社提供)
SUV「CX-5」のフロントグリルにはバイオエンジニアリングプラスチックを採用した(同社提供)【拡大】

 □マツダ 装備先行技術開発グループアシスタントマネージャー・一原洋平氏

 マツダが高いデザイン性が求められる意匠部品に植物由来の原料を使ったプラスチック「バイオエンジニアリングプラスチック」(バイオエンプラ)の採用を広げている。2015年にスポーツカー「ロードスター」に導入したのを皮切りに、現在では、ほぼ全車種で3~6部品を導入した。バイオエンプラの開発に当たった車両開発本部装備開発部装備先行技術開発グループアシスタントマネージャーの一原洋平氏は「今後、環境に優しいバイオエンプラを採用した意匠部品数を増やしていきたい」と力を込める。

 ◆耐光・透明性に優れる

 --バイオエンプラとは

 「植物由来の素材を原料としたプラスチック。特殊な分子構造を持つバイオエンプラは石油由来のエンプラよりも、傷がつきにくかったり、耐光性などに優れている。また、透明性が高いため、着色剤を添加することで、さまざまな色に着色することができるのも特徴だ」

 --バイオエンプラの開発に至った経緯は

 「自動車部品は『耐熱性』や『衝撃性』などの面で高い性能が求められている。このため、自動車業界ではこうした性能を兼ね備えた石油由来のエンプラが長らく主流となっている。しかし、世界的に環境保全機運が高まっており、当社は二酸化炭素(CO2)排出量と石油資源の使用量を削減できるバイオエンプラに着目した」

 --これまでにバイオエンプラを採用した意匠部品は

 「内装の意匠部品ではカップホルダーをはじめ、エアコンの吹き出し口、シフトパネル、ドアスイッチなど。外装の同部品では昨年、SUV(スポーツ用多目的車)「CX-5」のフロントグリルにも採用した。バイオエンプラ採用のフロントグリルの導入車種は順次、拡大していく予定だ」

 ◆素材・工程見直しコスト減

 --バイオエンプラの課題は

 「コスト面だ。石油由来のエンプラと製造方法などが異なるため、材料コストは高い。自動車部品は『環境性』『商品性』『経済性』を兼ね備えていなければならない。このため、自動車業界では採用が広がっていない」

 --どう克服したか

 「素材や工程などを徹底的に見直した。バイオエンプラの材料そのものに着色したり、金型の変更などで、石油由来のエンプラでは必要だった塗装工程を廃止することに成功。トータルコストの削減につながった。また、塗装工程をなくしたことによりCO2排出量も大幅に削減した。しかも、深みのある色合いや鏡面のような平滑感を兼ね備えており、塗装を施した従来の部品を上回る質感を実現した」

 --今後の展開は

 「より質感を高めていく。現在、バイオエンプラを採用した意匠部品の色は黒色のみだが、色のレパートリーを増やしていくほか、塗装ではできないような複雑なデザインを施した部品にも挑戦する」

 「また、少し先になるがバイオエンプラの原料の見直しも進めていきたい。現在は食べられない非可食性の工業用トウモロコシを原料としているが、将来は草などからバイオエンプラを作りたい。材料や工法などをさらに見直し、現在の技術をさらに磨きをかけていく」(松元洋平)

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【プロフィル】一原洋平

 いちはら・ようへい 徳島大工学研究科修了。2003年マツダ入社。技術研究所で樹脂の研究に携わる。15年4月から現職。39歳。山口県出身。