買収計画の決着は… 富士フイルムとゼロックス、反論繰り返す「泥仕合」


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 富士フイルムHDの助野社長は18日の決算会見で、ゼロックス買収計画について、両社の契約には法的拘束力があるとして、遂行を目指す考えを改めて強調した。ただ、買収条件の見直しに関するこれまでの対応をめぐっては、両社の主張に食い違いがあり、相互に反論を繰り返す「泥仕合」の様相を呈している。一連の対応で不信感を強める中、買収は白紙撤回となってもおかしくない状況だ。

 「(ゼロックス側の言い分は)正しくない」

 助野社長は決算会見で、ゼロックスが15日に米証券取引委員会(SEC)に提出した資料で示した、ゼロックスの買収条件見直しの提案をめぐり、富士フイルムHDが回答を先延ばししたり、虚偽の声明を出したりしたとする主張に対し、こう強く反論した。

 ゼロックスは、13日の買収合意破棄の発表前に、富士フイルムHDに対し、最低12.5億ドル(約1380億円)の買収額の積み増しを求めたという。この求めに対する富士フイルムHDの対応が不誠実だったとして合意を破棄したとした。

 助野社長は、こうした主張について、その間の対応を事細かに説明して、ゼロックスの言い分を否定。対応をめぐる両社の主張はかみ合わないままで、相互の信頼は大きく損なわれた。

 それでも富士フイルムHDは買収に動くが、客観情勢的にも買収は難しくなってきている。既にゼロックスで買収計画を進めてきたジェイコブソン最高経営責任者(CEO)は辞任。その後任には、買収に反対する大株主のカール・アイカーン氏が推薦したビセンティン氏が任命された。ゼロックスの取締役はアイカーン氏が推す人物が主要な地位を占めつつあり、助野社長が「ベストだ」とする従来条件で買収を進めるのは極めて厳しい情勢にある。(今井裕治)

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 ■富士フイルムと米ゼロックスの買収交渉をめぐる主張

 ◇富士フイルム

 買収条件見直し 「何ら具体的な提案を受けていない」(10日の声明で)

 買収の枠組み 「提案済みのプランがベスト」(同)

 買収破棄の見解 「一方的に契約終了する権利はなく、抗議する」(14日の声明で)

 ◇ゼロックス

 買収条件見直し 「買収条件見直しを繰り返し要求した」(15日に米証券取引委員会に提出した資料で)

 買収の枠組み 「現行の条件で株主の承認を得るのは極めて実現性が低い」(同)

 買収破棄の見解 「(富士フイルムは)買収の成功に協力するつもりがないと結論づけるしかなかった」(同)