「構造改革を経て、黒字企業に変わらなければならない」。東入来氏は5月の決算会見で強調した。これまでは目先の利益を優先して合理化を徹底できていなかったが、ようやく本格的な改革に踏み出す。ただ、中韓勢との競争も厳しく、再建の道筋は険しい。
「車載向けを中心に経営資源をシフトする」。JDIは売上高の8割を市場変動が激しいスマートフォン向けが占め、業績が左右されてきた。しかし、安定した収益を稼げる車載分野の拡大など事業構造の見直しも欠かせない。
試作段階の有機ELパネルが量産にこぎ着けられるかどうかも課題だ。もともと他社との資本提携を通じて量産に必要な資金を得る戦略だったが、液晶から有機ELへのシフトが想定より遅れるとの見方が広がって中国企業などとの出資交渉は難航。東入来氏は昨年まで「有機ELなくして将来はない」と量産投資を急ぐ方針だったが、「じっくり市場をみて判断する」とトーンを弱めている。
再建途上のJDI、そして再建から成長へとかじを切るルネサス。ともに、トップの経営手腕が問われる局面が続く。(万福博之)