東芝、経費削減による収益力強化最優先 株主総会、具体的な成長シナリオ触れず

東芝の株主総会に出席する株主ら=27日、千葉市美浜区
東芝の株主総会に出席する株主ら=27日、千葉市美浜区【拡大】

 東芝は27日、千葉市の幕張メッセで定時株主総会を開いた。主力の半導体子会社の売却で稼ぎ頭を失う中、株主からは次の柱を問う声が相次いだが、当面は経費削減による収益力強化に最優先で取り組む考えを示し、具体的な成長シナリオには触れなかった。M&A(企業の合併・買収)にも消極的な姿勢を崩しておらず、成長路線回帰への道筋は見えていない。

 「収益力を強化し残った22事業を底上げすることが成長の最初のステップだ」

 4月に就任した車谷暢昭会長兼最高経営責任者(CEO)は総会で、次の成長事業を問う株主の質問に対し経費削減が最優先事項になるとの認識を強調した。

 そう答えたのには理由がある。東芝は、6月に売却した半導体子会社「東芝メモリ」が営業利益の9割を稼ぎ出す半導体偏重の収益構造。それを除く事業の営業利益率は1.6%と低く、同じ業界の日立製作所や三菱電機の7%以上に比べ大きく見劣りしている。その要因を、車谷氏は「原価率が競合に劣ることが全て」と説明、喫緊の課題として徹底的な経費削減に取り組むとした。

 原価低減で確かに利益は底上げされるが、売り上げ増にはつながらず成長戦略とは言い難い。だが、今の東芝の事業を見渡しても売り上げ成長の牽引(けんいん)役は不在だ。医療機器やスマートメーターなどの成長事業は経営危機で早々に売却した。残る水処理やエレベーターなどのインフラ事業は安定的に成長するが爆発的な伸びは見込めない。車谷氏は「今後は機器販売後に保守やサービスで継続的にもうけるモデルを強化する」とするが、収益化には「時間がかかる」と認めている。

 手っ取り早いのはM&Aだが、東芝は6月に東芝メモリの売却益約1兆円のうち7000億円を自社株買いに充てる方針を発表。株主還元を優先したことで、M&Aの原資は目減りする。しかも、東芝はこれまでM&Aで失敗続きだったことから車谷氏は「特に慎重に検討する」と述べており、M&Aを含めた成長戦略は描けていない状況だ。(今井裕治)