【Bizクリニック】アマゾンと違う戦い方で利益を生む

 □イーソーコグループ 会長・大谷巌一

 2000年に開業したアマゾンジャパンは倉庫業免許を持つ物流会社だ。しかし、日本の物流会社と比べ大きな線引きをした。国内の一般的な物流コストが平均5%前後であるのに対し、2倍以上のコストを“投資”し、物流を重視しているのだ。アマゾンが膨大な投資で構築した物流システムと戦っても勝ち目はない。そこで筆者は、アマゾンのプラットフォームを利用する別の戦い方があるとみる。アマゾンが苦手とする分野や未着手のもの、あるいは自社の強みを見つけ、力を集中することで、全ての顧客を持っていかれることはない。それが物流不動産ビジネスの強みだ。

 当社は物流会社対象のセミナーを年数回開く。筆者は「流通系の荷主は何を求めるのか」とトンチがかった質問をする。回答は正確性、低コスト、スピードと物流業の教科書通りとなる。

 「あなたが荷主の立場なら何を求めるか」と角度を変えても、物流業の枠に捉われる参加者には見当がつかない。正解はシンプルで、商品を売って「利益を得る」。物流は利益を上げるための手段・ツールに過ぎないのだ。

 米アマゾンは物流と商流をコアに、進化と拡大を続けている。1994年に事業を開始し、17年売上高は前年比約30%増の約20兆円だ。オンラインストアは約12兆円でEC(電子商取引)のガリバー企業となった。

 創始者のジェフベゾス氏は「競合を見るな。顧客を見ろ」と社員に徹底した。品ぞろえ、低価格、利便性の“3つの柱”を追求して「地球上で最も顧客中心の会社」を掲げ、買収した企業は100社以上。17年には実店舗戦略として米高級食料品スーパー「ホールフーズ」を買収して400以上の店舗を持ち、世界最大の小売業ウォルマートの地位を脅かす。物流も巨大化を続け、繁忙シーズンに世界各地で宅配処理が追いつかず大混乱が生じた。

 物流戦略は数値に基づいて「アマゾン式ロジカル経営」を標榜(ひょうぼう)し、(1)KPI(キー・パフォーマンス・インジケーター=重要業績評価指標)(2)オペレーション(3)システム-の3つを経営の柱とする。物流拠点(フルフィルメントセンター)に出品者の貨物(商品)を集約し、商品の保管から注文処理、配送、返品に関するカスタマーサービスまでを代行する。その結果、出品者の8割以上が売り上げ向上に結び付いたという。

 アマゾンと他の物流会社との最大の違いは注文処理サービスであり、売り上げに結び付き、利益を出す仕組みだ。米アマゾンの不動産業参入も一時期噂されたが、不動産は唯一無二のため、逡巡(しゅんじゅん)していると思われる。物流不動産ビジネスの収入は不動産業がメインだ。アマゾンとの大きな差別化につながる有望ビジネスとなる。

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【プロフィル】大谷巌一

 おおたに・いわかず 高千穂商大(現・高千穂大)商卒。1981年東京倉庫運輸入社。92年東運開発に出向し、物流不動産ビジネスを創始。99年アバンセロジスティック(現イーソーコ)を設立し、副社長。14年から現職。日本物流不動産評価機構副会長、日通学園流通経済大客員講師を務める。61歳。東京都出身。