【町工場を継ぐ(上)】社長急死、伝統を守った若手 大廃業時代に挑む「ものづくりの町」 (3/4ページ)

社長の遺志を継いで藤綱合金を立ち上げた藤綱伸晴社長(左)=大阪府東大阪市(渡辺恭晃撮影)
社長の遺志を継いで藤綱合金を立ち上げた藤綱伸晴社長(左)=大阪府東大阪市(渡辺恭晃撮影)【拡大】

  • 中小企業の経営者は高齢化している
  • 東大阪市と全国の従業員ごとの比率(製造業)

 7年がかりの事業承継

 東大阪では、昭和50年代後半に1万社を超えたが、現在は約6千社。従業員20人未満が9割で、4人以下は6割を占める。経営者も高齢化し、中小企業の平均引退年齢とされる「70歳以上」は3割弱だ。

 「日々の仕事で精いっぱい。後継ぎを考える余裕もない」。町工場からはそんな嘆きが聞かれる。

 こうしたなか、先を見据えて後継者育成に取り組んだのが、半導体製造装置などのメーカー、中農(なかの)製作所(同市足代(あじろ)北)。現会長の中農康久さん(71)は42歳で社長に就任し、50歳から準備を始めた。先代の父・茂さんから経営について学んだことがなかったのが理由だ。「当時は『背中を見て覚える』時代だった」

 後継選びを社員に通知し、当時26歳で工場長の西島大輔さん(39)を指名。突然の若手抜擢(ばってき)だったが、ベテランからも人望があった。人事権などを徐々に引き継ぎ、承継の「並走期間」は7年に及んだ。

 中小企業基盤整備機構による経営者調査では、後継者育成に必要な期間は2~5年が50%、5~10年と答えたのは30%だった。中農さんは言う。「次の世代がやりやすいよう“地ならし”をするのが経営者なんです」

ものづくりの歴史刻む東大阪