【トップは語る】ブラザー工業 顧客ニーズと現場意識の乖離防げ


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 □ブラザー工業社長・佐々木一郎さん(61)

 --日本のものづくりの課題は

 「ハイテクをやさしいかたちで顧客に提供することを会社の使命の一つとしている。多くの日本のメーカーの製品は機能も充実し、全体的に質が高いと思うが、それを十二分に説明できないと顧客が使いこなせない」

 --韓国や中国のメーカーは日本製品のそこを弱点として突き、存在感をあげてきた

 「いいものをつくっても、顧客にそれをわかってもらえないと、結果として無駄なものとなってしまう。そこで若い社員はできる限り、販売や営業など顧客との接点が持てる現場に配属させたいと考えている。自分の仕事が顧客のビジネスにおいて価値を生んでいるという実感を持てる組織にしていきたい。そうした経験が新たな仕事へのモチベーションにもつながるはずだ」

 --顧客の声をどう製品に反映させていくかは、メーカーにとっては永遠の課題でもある

 「開発者はどうしても研究室に閉じこもりがちだ。そこで販売の現場に一定期間出して、顧客の声に直接触れる機会をつくっている。顧客の意見や要望はこれまでCS推進部が内容を集約してから社内の各部署に説明していたが、そのままのものを全部署で共有できるように改めた。これによってよい製品を作るために何をすべきかを自ら考え行動するように社員の意識が変化した」

 --「売れるものづくり」を目指している

 「ブラザーのコーポレートスローガンの『at yourside』。あなたのそばにという意味だが、自分たちのものづくりが独り善がりになっていないかを客観視できるような研修プログラムを作れないかと考えている。技術の進化がどんどん速くなるなか、顧客ニーズと現場の意識の乖離(かいり)を生まないような取り組みが必要だと感じている」

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【プロフィル】佐々木一郎

 ささき・いちろう 名古屋大大学院工学研究科修了。1983年ブラザー工業入社、2005年ブラザーUK社長、09年ブラザー工業執行役員、13年常務執行役員、14年取締役、17年同専務執行役員、18年6月から現職。愛知県出身。