【町工場を継ぐ(中)】企業城下町でも…「大手依存」に限界 独自技術で販路拡大へ (1/3ページ)

倒産は減少しているが、休廃業・解散は増加傾向にある
倒産は減少しているが、休廃業・解散は増加傾向にある【拡大】

  • 事業継承の際に苦労した点

 「わしの賞味期限がきれたんや」。パナソニックの企業城下町、大阪府守口市にある三郷(さんごう)金属工業の児島貴仁社長(43)は、父で社長だった松布(まつぶ)仁志さん(71)の言葉が忘れられない。

 15年ほど前、松下電器産業(現パナソニック)が1万人規模の早期退職を実施。松布さんは、長年つき合ってきた松下社員がいなくなることで信頼関係が途切れ、これまでのやり方では通用しないと感じた。

 昭和21年の創業時から家電部品の組み立てや溶接を担い、松下にすべて納入してきた。早期退職により、松下の担当者が製造現場をあまり知らない若手になり、将来への不安が強まった。松布さんは、松下一辺倒でやってきた経営体制では限界があると、平成17年に30歳だった息子の児島貴仁さんに社長を引き継いだ。

 松下はさらに、経営効率化のため国内の下請けへの発注を、人件費の安い海外にシフトしていった。

 「大手に依存しすぎない次のビジネスの種を育てないと」。貴仁さんは、自社で培った「レーザー溶接」を展示会で他のメーカーにPRした。携帯電話や車載用などのリチウム電池に欠かせない溶接技術だ。高い精度が要求される松下への納入実績も信頼の裏付けとなり、大手自動車メーカーなどに販路を拡大した。

 「事業承継は、単に会社を継ぐだけではない」が信条。将来を見据え、社員に経営者セミナー参加を促し人材育成にも力を注ぐ。

町工場から博士号