【町工場を継ぐ(中)】企業城下町でも…「大手依存」に限界 独自技術で販路拡大へ (3/3ページ)

倒産は減少しているが、休廃業・解散は増加傾向にある
倒産は減少しているが、休廃業・解散は増加傾向にある【拡大】

  • 事業継承の際に苦労した点

 変革こそ生き残る道

 「かつてはものを作ればビジネスとして成立した。今はそれが通用しない」。中小企業の町、大阪府東大阪市のクラスターテクノロジーの安達良紀社長(47)は、昨年10月に父から会社を引き継いだ。温度や湿度変化でも変形しにくい樹脂複合材料を開発し、デジタルカメラのセンサーなどに採用されている。最先端のナノテクノロジー技術は小泉純一郎首相(当時)が視察に訪れたほどだ。

 新しい分野で海外展開などに成功している企業がある一方で、行き詰まっている企業も少なくない。「生き残るために『あと一歩』をどう踏み出せるかが難しい」と田中教授。「生産性向上に向けた設備投資への支援など、企業の改革を後押しする行政の取り組みが一層重要だ」と話す。

【豆知識】廃業続けば深刻な国富喪失

 中小企業では、高度経済成長期に創業したケースも多く、創業者や2代目が高齢化。世代交代をいかに進めるかという「事業承継」が課題となっている。

 経済産業省によると、平成37年までに70歳を超える中小企業の経営者は約245万人に上り、半数に当たる約127万人は後継者が未定。この状態を放置すれば廃業が急増し、同年ごろまでの累計で650万人の雇用と22兆円の国内総生産(GDP)が失われると試算。

 近畿経済産業局によると、近畿2府4県と福井県では21~26年で7万1902の中小企業が減少。37年ごろまでに118万人の雇用と4兆円の域内総生産(GRP)が失われるとしている。

 大阪商工会議所は今年度から32年度にかけ、管内の事業承継について中小1万社を支援する取り組みをスタート。アンケートを通じて支援を求める企業を訪問し、金融機関やM&A(企業の合併・買収)仲介業者を紹介する。

 大商担当者は「事業承継に取り組まなければ、今後5年間でさまざまなものづくり、産業が立ちゆかなくなる恐れがある。事態は深刻だ」と話す。

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