ITで介護支援 業務効率化 行政書類作成を簡易化、工事見積もり

機能訓練をする利用者のそばでタブレット端末を使う施設の職員(左)=さいたま市の「あしすとリハ与野」
機能訓練をする利用者のそばでタブレット端末を使う施設の職員(左)=さいたま市の「あしすとリハ与野」【拡大】

  • エス・エム・エスの介護事業所向けソフトウエア「カイポケ」の画面
  • ユニバーサルスペースが開発中の介護リフォーム用アプリを使うイメージ

 介護現場にITを導入、業務を効率化する動きが広がっている。事務作業を軽減するため、行政に提出する書類を簡単に作成できるソフトウエアが登場。手すりの設置など自宅のリフォームの手続きを短時間で完了させるアプリを開発する取り組みもみられる。

 さいたま市の「あしすとリハ与野」は、機能訓練に特化した通所型の介護施設だ。40代から90代まで、毎日30~40人が理学療法士による訓練や機械を使った運動療法に励んでいる。

 同施設が昨年から導入しているのが、介護事業所向けシステムを手掛けるエス・エム・エスが開発した「カイポケ」だ。タブレット端末に利用者の血圧、脈拍などのデータや、その日に実施したリハビリ内容を入力すると、インターネット上に即座に記録される。

 複数の端末から利用者の状況を確認できるほか、行政に出す資料も自動で作成される。施設を運営するメディカルアシスト(埼玉県上尾市)の岩崎英治社長は「行政に提出するための月末の記帳作業を大幅に削減できた。職員の残業は非常に少ない」と強調する。

 職員からも「事務室での作業が減り、利用者と接する時間が増えた」との声が聞かれる。股関節の痛みで歩くのが不自由だった90歳の男性は「付きっきりで世話をしてもらって歩けるようになった」と満足げだった。

 カイポケの料金は内容によって異なり、基本的な機能は平均で1事業所当たり月2万2000円程度。全国約2万2000の事業所が導入している。

 ユニバーサルスペース(横浜市)は、関東を中心に直営、加盟店で介護リフォームを展開する。現在、タブレット端末でトイレなどの写真を撮るだけで、手すり設置工事の見積書を作成できるアプリを開発中だ。年内の実用化を目指している。

 必要な手すりの長さをアプリが計測、材料費や施工費を計算し図面もつくってくれる。介護保険の申請に必要な書類を簡単に作成できるという。遠藤哉社長は「介護リフォームは緊急性が高いのに施工に時間がかかることが多い。アプリは将来的には一般に公開して多くの事業者に利用してもらい、在宅介護に役立ててもらいたい」と話す。