【高論卓説】被災3県に顕著な起業ブーム 「ユートピア」ベンチャー地帯ほうふつ (1/2ページ)

 福島県の沿岸を走るJR常磐線富岡駅から降りる乗客たちは、夏休みの里帰りの荷物を抱えて、さらに北上するために駅前に止まっている代行バスに向かう。東日本大震災によって被災した常磐線は昨秋、富岡駅まで復旧し、残すは富岡-浪江駅間の20.8キロ。来年度中には全線開通する予定である。

 富岡町は居住制限区域が昨年春に解除された。役場はこれを前にして業務を再開した。今年3月現在で、町内の居住者は321世帯の458人。県内外に避難している人も含めると、全体の4%である。中学校の体育館から生徒たちが運動する声が聞こえ、グラウンドの草原で母親が幼児を遊ばせている光景が目に入る。町は生きていると感じさせる。

 東京電力柏崎刈羽原子力発電所に資材を納入する会社を経営していた、司馬天風さんが福島第1原子力発電所向けの納品に業容を拡大しようと考えて、富岡町に拠点を設けたのは東日本大震災が起きる直前の2011年3月1日だった。原発事故後の東電の要請に応えようと、いわき市に拠点を移しながら撤退することは考えなかった。

 特殊な超小型ロボットを調達ができないか、という注文があった。がれきの中を進み、配管の中をはうようにして進んでバルブを閉めるという仕様だった。既存の製品はなかったので、メーカーと組んで3Dプリンターなどを応用してロボットを作り上げた。これがきっかけとなって、司馬さんは16年2月にロボットを作るHaloworldを設立した。

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