【知恵の経営】銘柄豚が6次産業化へ発展

 □アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

 独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となり高収益を実現している企業を紹介している。今回は農産物の生産、酪農製品加工、食品製造、農業公園運営の事業と食育の取り組みなどを通じ次世代に豊かな自然環境と農村文化を守り、つなげる運動を推進する、伊賀の里モクモク手づくりファーム(三重県伊賀市)の池クジラぶりを見ていきたい。

 同社の創業者である木村修氏は、三重県経済農業協同組合連合会に勤務していた1983年に伊賀地区の生産者と共同で銘柄豚「伊賀豚」を誕生させ、「ハム工房モクモク」を88年に創業した。しかし、伊賀豚の加工品作りに取り組むものの、どんなに頑張っても1日数万円の売り上げにしかならず、苦労の連続。そうした中、89年に地元PTAの要請でウインナーづくりの体験教室を設けると大盛況となり、口コミで半年先の予約までいっぱいになった。予想外の反響を目の当たりにして「ウインナーづくり」という付加価値提供を主力事業にすることを決めた。

 工房長らをドイツへ修業に出すなど技術力を高め、同社の商品はハム・ソーセージコンテストで数多くの賞に輝く。経営努力により農業テーマパークや農産品の生産・加工・直販などビジネスの土台を形成し、95年に設立した体験型ファクトリーファームが現在のモクモク手づくりファームへと進化した。

 敷地面積14ヘクタールのファームには、ウインナーづくり、乳しぼりなど食農を体験できる施設、ブルーベリー摘みやジャージーアイスクリーム教室などの体験スペース、さらにレストラン、直売所、入浴施設、宿泊施設、貸し農園などがある。一日中、遊び・学ぶことができるこの滞在型施設には、年間50万人もの人々が来園する。また、会員数約5万世帯の「モクモクネイチャークラブ」があり、会員は500円の入園料が無料になるほか、ポイントカードを活用したさまざまな特典が手厚く与えられ、ヘビーユーザーにはさらに大きな特典もある。

 一方、ファームから2時間圏内の三重、滋賀、大阪、京都、兵庫の各府県や名古屋市に直営レストランを展開したり、東京都内ではお弁当テークアウト店舗を設けたりするなど、なかなか来園できない消費者が都会にいるまま同社に触れ合うことができるようにして、来園を促す仕組みも作っている。

 同社が推進する農業の6次産業化には独自の理念がある。それは、原料や味および安全・安心に徹底的にこだわった付加価値の高い農産品や滞在型施設を理解し、食べて遊び、学んでくれる消費者を、自分たちの「仲間(ファン)」と位置づけていることだ。

 同社は、こうした「モクモクファームファン」がわざわざ来て楽しんでくれる池を築き、そのクジラとなっている。

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【会社概要】アタックスグループ

 顧客企業1700社、スタッフ200人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。