【論風】AIと消極的な技術開発 中小企業の技術継承策を (1/2ページ)

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□早稲田大学名誉教授・田村正勝

 第4次産業革命がいわれる人工知能(AI)は、人間と同じ知能を、コンピューター上で実現させ、あるいはこれを組み込むロボットなどの一連の技術である。将棋の対戦ではAIがプロ棋士に勝ち、2013年には「東ロボくん」が、大学入試センター試験と東大2次試験の問題を解読し、私立大学に合格の水準を示した。

 未来学者レイ・カーツワイルは「AIが知識・知能で人間を凌駕(りょうが)し、世界を変革する技術的特異点(シンギュラリティ)の到来が2045年」と言う。マイケル・オズボーンは、スポーツ審判員、集金人、レジ係、測定技術士、データ入力員、不動産ブローカー、ホテルの受付、銀行融資係が、今後10年でAIに代替されるという。

 このように、新技術の世界的な広がりにもかかわらず、日本企業の研究開発費の伸びは海外企業に劣る。17年までの10年間の研究開発費の伸び率はアジアが4.1倍、米国の86%増、日本は12%増に過ぎない。多くの大手が、研究開発費の世界ランキング順位を落とした。なぜか。

大手は開発よりM&A

 第1にこれらの開発には巨額の費用がかかり、コスパ(費用対効果)が問題だ。また人口減少から、国内需要に限界が見通される。したがって内外の効率の良い企業のM&A(企業の合併・買収)の方が、コスパが合うとの算段だ。それゆえ17年度のM&Aは、12年ぶりに過去最高となった。

 もう一つ研究開発に消極的な理由は、新技術・機械の導入が、必ずしも生産性の向上につながらず、投下資本利益率が減少する傾向ゆえだ。

 従業員1人当たりの機械の量(金額)である「労働装備」は、1998年度と2002年度に、1985年度の約2倍となったが、従業員1人当たり創出の付加価値(労働生産性)は、30%以下の伸びにとどまった(財務省『法人企業統計年報』各号より算出)。

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